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写真:母親たちによる国会請願では「保育園落ちた」のプラカードが並んだ

 舛添要一東京都知事の辞職により、都知事選との時間差選挙の様相となった参議院選挙。7月10日の投開票日まで3週間を切り、各党の論戦がにわかに活発化している。

 選挙公約で自民はアベノミクスの成果を強調、さらに野党のお株を奪うような社会保障の充実策を並べる。ただ、その財源となる消費税10%への引き上げは、2019年10月までの延期を決めた。

 私たちの暮らしを大きく変えるかもしれない参院選の争点を検証していこう。

■安倍政権下で非正規雇用は働く人の4割に

 再び消費増税の凍結を表明し、参院選に突入する安倍政権。与党幹部は街頭演説で、「アベノミクスは道なかば」と主張、続行させてほしいと国民に訴える。

 これを経済アナリストの森永卓郎さんは、こうバッサリ斬る。

「アベノミクスがうまくいかなかったのは、消費税を5%から8%へ引き上げてしまったから。ところがそうは言えないので、世界経済の成長率が悪いと責任転嫁している」

 2013年まではうまくいっていた。金融緩和の効果で日経平均株価は2倍になり、倒産件数はバブル期並みに減少した。学生の就職も完全な売り手市場に。海外へ移転していた製造業の流出も止まった。

 森永さんはそうした効果を認めながらも、誤算があった、と指摘する。

「企業がドケチで、史上最高額になっている内部留保を賃金に回さなかったのです。本来であれば、儲かっている企業から取って労働者に回すのがやるべき政策。なのに、消費税を上げて庶民の負担を増やし、それを原資にして企業の法人税を下げるという真逆のことをやった」(森永さん)

 アベノミクスのおかげで富裕層と大企業と国家公務員はバラ色。だが一方で、安倍政権下で非正規雇用は170万人増え、働く人の4割に達した。女性に限れば7割にものぼる。

 実質賃金は5年連続マイナス、大学生の半数が奨学金を借り、過去最高を更新し続ける生活保護受給者の半数は65歳以上だ。子どもから現役世代、高齢者にいたるまで格差は広がった。

 '14年4月に消費税率を8%に引き上げた際、政府は「社会保障にあてる」と熱く、強く訴えたが、介護福祉ジャーナリストの田中元さんは「明らかに方便ですよね」と冷ややかだ。

「消費税が3%アップして約8・2兆円の増収になった。確かに社会保障に使ってはいますが、社会保障の充実には2割しか使われていません。ほとんどが既存の政策に関してこれ以上、赤字国債を発行しないためのお金です」(田中さん)

 消費税10%延期の決定に、ひとまずホッとした主婦は多いはず。でも、その先はどうなるのか? 森永さんは次のように見立てる。

「参院選で安倍自民が勝てば、次に待ち構えているのは間違いなく『ホワイトカラーエグゼンプション』。いわゆる“残業代ゼロ法案”です。また金銭解雇という制度も取り入れます。正社員も手切れ金さえ払えば、いつでもクビを切れる。同じ仕事の賃金を同じにする『同一労働同一賃金』では、正社員の時給をパート・アルバイト並みに下げる。格差が拡大する仕掛けを次々に打つ。これを私は“3本の毒矢”と呼んでいます」