■王道からはずれた邪道、破道、外道の政治

 憲法改正は安倍首相の宿願といわれる。自民党は憲法改正草案(下記「注目ポイント」参照)をつくり上げ、連立与党を組む公明党と改憲に前向きなおおさか維新の会、日本のこころを大切にする党の協力を得て、衆参そろって憲法改正発議に必要な3分の2議席以上の勢力確保を狙う。

 安倍首相は今年1月、憲法改正について「参院選でしっかりと訴えていく」と明言していた。

 ところが、公示前日の与野党の党首討論では、「すでに改正案を示している。(条文を)どう変えるかを決めるのは、選挙ではなく国民投票だ」(安倍首相)

 と話をすり替えた。

 これに怒った野田元首相は街頭演説で「3分の2議席を獲得したら、あとは任せろということ。こんなやり方、認めていいんですか」と聴衆に訴えかけた。

「このやり方は今の白鵬の相撲に似ています。八百長問題のころは1人横綱でよく頑張っていました。最近、力が衰えてきたぶん、立ち合いが汚い。いつも左手で張り手ぎみにフェイントをかけ、相手がひるんだところに右手で“かち上げ”なんです」

 かち上げとは、前腕を胸の前に構えて相手力士に体当たりする技。プロレス・格闘技ファンで知られる野田氏は身振りを交えて続ける。

「かち上げは認められている技ですけど、白鵬はヒジを相手の顔面に入れるんです。(プロレス技の)エルボーです。豪栄道は顔面骨折、勢は失神しました。顔は鍛えられない。今やっている安倍政治は同じです。

 左手で張り手とみせかけ、実は右手で安保法案強行採決。今度は憲法改正です。顔面骨折するのは国民ですよ。こういう王道からはずれた邪道、破道、外道の政治を、みんなで倒していこうじゃありませんか!」(野田氏)

 街宣カーの隣に立つ蓮舫代表代行も苦笑い。妙な熱を帯びた演説に聴衆は沸いた。

 別の日。千葉・習志野市では共産党の志位和夫委員長が一本気な熱弁を振るった。

 民進、共産、社民、生活の野党4党は「安保廃止」「改憲反対」で共闘し、1人区全32区で統一候補を立てた。野党一本化を呼びかけた市民連合とは政策協定を結んだ。

「自衛隊で今問われているのは、合憲か違憲かという問題ではないんです。海外の戦争に送っていいかどうかが問われているんです。専守防衛の志を持って入隊し、災害救援で汗を流す自衛官を、殺し殺される戦地に送っていいんですか。そんなことがあっちゃならないと、野党は結束したんです」(志位委員長)