わが子の帰りを待つ気持ちは変わらない。3月末には埼玉・朝霞市で不明女子が無事に保護された。

「今年は区切りの年ですし、ゆかりの誕生日ケーキは手作りにしようと思っているんです。スポンジに生クリームを塗って、フルーツをたっぷり挟んで……。下の娘2人にも手伝ってもらおうかな」

 そう言って母親は目をそらした。視線の先には、あどけない笑顔の娘の写真がある。

 横山保雄さん(49)と光子さん(50)の長女・ゆかりちゃんが突然、姿を消してから今年で20年がたつ。ゆかりちゃんがいなくなってからも毎年、家族そろって7月11日の誕生日を祝っている。『週刊女性』が初めてご両親を取材した2年前には、苺ののったショートケーキを買った。

 ゆかりちゃんは1996年の7月7日、両親とともに来店した群馬県太田市内のパチンコ店でひとりになって遊んでいる間に行方不明になった。

「今年4月末までに投入した捜査員は延べ約27万人、県警に寄せられた情報は累計3898件です。現在も39人の捜査体制を敷いています」(群馬県警の広報広聴課)

 情報の8割は、店内の防犯カメラに映っていた不審な人物に関してだという。県警や、太田市内22軒のパチンコ店を統括する太田遊技場組合は、現在でも毎月ビラ配りを行い、情報提供を求めている。

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店内防犯カメラの映像に映っていた重要参考人

「管轄店すべての店内に事件のポスターを貼り、大型店舗では重要参考人が映ったビデオも流しています。今月3日に市内のショッピングモールで行われたビラ配りには、全店舗から従業員が参加しました。

 今では事件発生当時のことを知る者は2、3人のみですが、若手従業員も活動に参加させ、事件の風化を防ぐことを大切にしています」(太田遊技場組合の組合長・森山秀夫さん)

 先月7日には、両親と太田署の18~30歳の若手警察官との意見交換会も開催された。

「同年代の警官にゆかりを重ねてしまい、最初は言葉に詰まりました。“一刻も早く見つける努力を惜しまない”と若い女性警官が言ってくれたのには、背中を押されました」(保雄さん)

 スーパーで激励の声をかけられることもあるという。

 今年の3月末には、埼玉県朝霞市で2年間、行方不明だった女子中学生が無事に保護され、世間を安堵させた。

「ご両親がどれだけ苦しんだかを考えると、生きてまた帰ってきてくれて本当によかった。妻とニュースを見ていて、言葉は発さなかったけれど互いにすごくホッとしているのがわかりました」(保雄さん)

 行方不明者発見の朗報は喜ばしいことに間違いない。

「ただ、そう思いつつも“なんでゆかりじゃなかったんだ”っていう気持ちは常についてまわりますね。次こそは、ゆかりがいい。ゆかりも……」

 明るくすらすらと受け答えする保雄さんが初めて言葉を詰まらせた。光子さんは小さく「そうね」とうなずく。

「俺ね、ゆかりが見つかったときのシミュレーションを何度もするんですよ。警察から連絡を受けて、“すぐ行きます!”ってヘリコプターに乗り込みます。遠くで見つかっても、一刻も早く駆けつけたいから」

 と保雄さんはひと息に続ける。

「会えたときには思い切り泣きじゃくるだろうなあ。なかなか言葉にならなくても、“無事でいてくれてありがとう”“あの日、ちゃんと見ていなくて、ごめんね”と伝えたいです。許してもらえるまで謝って、それから家族5人でこれまでの時間を埋めていきたい」