■憲法改正に加えて働き方に論点隠し

 そう考えないと、どうみても街頭演説の聴衆に10~20代の若い人がいないのに、若者向け政策の推進を力強く訴えることの説明がつかない。

 民進党の岡田代表はこうも話した。

「子どもの6人に1人が貧困です。ひとり親家庭の2世帯に1世帯が貧困です。これが日本の現実ですよ。全国に子ども食堂が広がっています。素晴らしいことです。だけど、夕食もまともにとれない子どもがこんなにいるという現実はおかしくないですか。母子家庭の2世帯に1世帯が貧困なんて、先進国でそんな国はありませんよ。政策の軸が間違っているんだ!」

 怒気を含む声だった。演説を聞き終えた52歳の主婦は共感して言う。

「子ども食堂も給付型奨学金も早く手を打ってほしい。娘は高校3年生で大学進学を考えている。奨学金は借金なわけだし、学費をどうするか計算している。娘の友達の中には、お金がかかるから進学しなくていいんじゃないかと親に言われた子もいる。ゆっくりじゃ間に合わない」

 アベノミクスの恩恵が隅々に行き渡るのを待つ間にも、子どもは成長していく。親の収入が増えなくても給食費は払わなければならない。

 シングルマザーなどひとり親家庭はより深刻だ。待機児童になった場合、夫婦で負担を分け合うことはできない。子育てのために職場を失ったり、収入が減る危険性が高まる。親の収入減は家計を直撃し、子どもは親に遠慮するようになる。貧困は連鎖する。

 民進党の野田佳彦元首相は街頭演説で、「私には忘れられないエピソードがあるんです」と切り出した。

「2013年11月、ある病院の賠償責任を問う判決が下されました。60年前の赤ちゃん取り違えをめぐる判決でした……」

 裕福な家庭の長男として生まれるはずだったAさんは、13分後に生まれたBさんと病院で取り違えられた。母ひとり、兄2人、生活保護を受けながら3人目の子どもとして育った。

 6畳ひと間の暮らしだ。勉強したかったけれど定時制高校に行くのが精いっぱい。町工場で働いた。兄が倒れ、長距離トラックの運転をしながら兄の生活を支えた。

 一方、Bさんは裕福な家庭で育った。私立高校から私立大学に進学し、安定した豊かな人生を過ごした。遺産を相続して資産家になったという。

「これが現実なんです。子どもの力では残念ながら貧富の差を変えられない。自己責任では変えられないんです。社会が子どもの育ちと若者の学びを後押ししなければいけない」(野田元首相)

 言うのは簡単。実行するのが難しい。しかし、言いもしないことを実行するとも考えにくい。

 参院選における若者の雇用政策や奨学金問題について、市民団体「ブラック企業対策プロジェクト」が6月30日、都内でシンポジウムを開いた。法政大の上西充子教授は「憲法改正だけでなく、働き方に関しても論点隠しがある」と指摘した。

「政府は労働基準法改正案を出しているのに、自民党の政策にはほとんど出てこない。野党の政策には出てくるが、与野党で論戦をかわす場がない」

 これまで若い世代は投票率が低いからと軽視されがちだった。

 各政党の選挙公約などをじっくり読み込み、街頭演説に耳を傾けて判断したい。