参考にするのはあなたの勝手です

 しかしこの本は、読む人に強要は一切せず、あくまで「ヒント」として書いている、と五木さん。

この本は“ヒント”ですからね。ヒントというのは解答じゃなくて、補助線なんです。ちょっと光をこっちから当ててみたらどうですか、違ったふうに見えるかもしれないですよ、もしそれが役に立ったら考えてみてください、と相手に手を差しのべてないんですよ(笑)。こうしなさい、って言い切っていることが全然ないし、自分の体験の中でこういうことがあったということが書かれていて、それを参考にするのはあなたの勝手です、というね。

 それにしても新しいものが次々に登場して、いろんなものが日々古くなっていく時代の中、この本を読んでくれる方がいるのは、ありがたいことですね」

■取材後記

 文庫版は全5巻が5か月連続発売の予定で、各巻の巻末には五木さんと阿川佐和子さんの解説対談が収録されます。これは五木さんの発案だそう。

「著者はこういう意図で書いたのであろう、なんて全然間違っている文芸評論の解説があってね(笑)。だったら読者の声を代表した評論家と作家の対談のほうがいいと、僕の『忘れえぬ女性たち』に解説対談を載せたのが文庫の歴史で初めてだったんです。今回それを思い出してね、やってみたんです」