全国の大学、会社から「講義をやって」とひっぱりだこの芸人・キングコング西野亮廣さん。“仕事の広げ方”“エンタメの仕掛け方”“イベント集客”などのノウハウを型破りな視点で語り、聴衆の度肝を抜いている。
「テレビの仕事をやめる」と宣言してから10年──。漫才師、絵本作家、イベンター、校長、村長など肩書を自由に飛び越え、上場企業の顧問にも就任しちゃった西野さん。どうやって“好きな仕事だけが舞い込む働き方”を手に入れたのか。その秘密を綴った異色のビジネス書が『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』。8月12日の発売後、SNSで「泣けるビジネス書」と話題になった、この本の一部を特別掲載します。(最終回)

  今度は僕が、ほぼ1か月間、仕事をサボってみることにした。ただサボるわけじゃない。その時間を使って、徹底して、お客さんに恩を売るのだ。

 2015年の夏のこと。

 ちょうど個展期間中だったので、もちろんノーギャラで毎日ギャラリーに通って、お客さんの悩みを聞き、話し、芸をし、「歌え」と言われれば歌い、酒を出されたら呑んで、信用を積み重ねまくった。

 日割り計算ではなくて、もう少し長いスパンで見たときに、この1か月間の収入が上がるか、下がるかを知りたかった。

 それを確かめるために、裏では、個展とはまるで関係のない4冊目の絵本の制作費を募るクラウドファンディングを立ち上げてみた。

「信用=お金」を確かめる実験。

 んでもって、結果がどうなったかというと、個展が終わり、クラウドファンディングも、あと3時間で終了というタイミングで、僕のツイッターに「個展で毎日楽しませてくれてありがとうございます。お礼に、少額ですが、クラウドファンディングのほうに支援させていただきます」とコメントが来た。

 そこで僕が何気なしに「ありがとう!」と返信した次の瞬間、「僕もお礼に……」「私もお礼に……」と夏の間、個展に遊びに来てくださったお客さんからのコメントが止まらなくなり、ラスト3時間で300万円が集まり、最後はサーバーがパンクしてクラウドファンディングは終了。結果、1000万円以上の支援が集まった。

 これが、僕が夏の間に積み重ねた信用だと思う。

 昔話みたいな話だけれど、どうやら恩は必ず返ってくるようで、今の時代、その“返し方”をクラウドファンディングやブロマガなどに誘導すれば(言葉は悪いけど)、ダイレクトにクリエイターの活動資金に繋げることができる。

 その方法でマネタイズするためにクリエイターがやらなきゃいけないのは、信用を積み重ねること。

 クリエイターの信用とは何か? 相手を楽しませることだ。

 とても面白い時代だと思う。

 これまでは給料(ギャラ)という方法でしかマネタイズできなくて、そのルールの中で動く以上は給料(ギャラ)を支払う側の都合の中で活動しなきゃいけなかったんだけど、マネタイズのタイミングを後ろにズラすことができる時代になったので、照準をお客さんに絞って、「お客さんを楽しませる」ということを、より純粋に追求できるようになった。

 徹底的に楽しませて、信用の面積を広げれば、後でいくらでもマネタイズできる。

 マネタイズのタイミングを後ろにズラすと「面白い」の可能性は増える。そして今は、それができる時代だ。

 これは、「お金の正体って何なの?」という問いから生まれた選択肢で、だから夢に生きる人こそ、お金とキチンと向き合うべきだと思う。

 そのほうが面白いことができるから。

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《プロフィール》
西野亮廣(にしの・あきひろ) 1980年、兵庫県生まれ。1999年、梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。活動はお笑いだけにとどまらず、3冊の絵本執筆、ソロトークライブや舞台の脚本執筆を手がけ、海外でも個展やライブ活動を行う。また、2015年には“世界の恥”と言われた渋谷のハロウィン翌日のゴミ問題の娯楽化を提案。区長や一部企業、約500人の一般人を巻き込む異例の課題解決法が評価され、広告賞を受賞した。その他、クリエーター顔負けの「街づくり企画」、「世界一楽しい学校作り」など未来を見据えたエンタメを生み出し、注目を集めている。2016年、東証マザーズ上場企業『株式会社クラウドワークス』の“デタラメ顧問”に就任。

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