一筋縄ではいかない奇妙な人間関係

 良好な撮影現場の雰囲気は、制作統括の玉江唯プロデューサーも実感している。

「素の観月さんと緒川さんが台本を読んで“旬平、ひどいよね”と言いながら、盛り上がっていることもあります。女優ではなく、ひとりの女性として、意外性のあるストーリーを楽しんでいらっしゃるようです」(玉江P、以下同)

 映画を手がけるスタッフが結集し、カメラワークや照明など、ドラマより映画に近い手法で丁寧に撮影している。

「連城作品の世界観が魅力ある映像になっています。金沢の景色なども美しく、小旅行をしている気分になれたとのご意見もいただいています。どのシーンも非常にこだわって撮っているので、新たなドラマファンが生まれてくれるとうれしいですね」

 見事な調度品や見た目にも美味しい数々の料理、そして旬平の板長ぶりにも注目だ。

「前川さんは撮影前に、料理人の道場六三郎さんの一番弟子で、本作の料理監修の舘野雄二さんに、包丁さばきや料理人の所作などを学びました。プライベートでも、お料理をする前川さんは1回で刺身のさばき方を習得され、舘野さんも驚かれていました」

 料亭の女将として奮闘する通子が直面していく、夫の不倫、愛人・多衣との対立、嫁姑問題などの関係性を簡略化せずに、深く描くことにこだわったという。

 一筋縄ではいかない奇妙な人間模様の面白さに加えて、見どころのひとつは、観月の迫真の演技。

「ふだんは感情をあらわにしない通子ですが、時折、内に秘めていた気持ちが放出されることもあります。その両方を観月さんが見事に演じています。逆境をバネにして成長していくヒロインの力強さに、ぜひご期待ください」