人生を悲観している人に読んでほしい

■『九尾の猫』(エラリー・クイーン 著/早川書房)

NY市を震え上がらせる連続絞殺魔「猫」。被害者の共通点が見つからず捜査は難航。過去の失敗を引きずる探偵エラリイは警視である父とともに犯人を追うが……。

 中学生で海外ミステリーにハマり“文学少女”となった、あさのさん。当時、謎解きのおもしろさや個性的なキャラクターが光って見えた『シャーロック・ホームズ』やアガサ・クリスティ作品に比べ地味だと感じたのがエラリー・クイーンの『九尾の猫』。

 ところが、結婚や出産を経験した後、30代になって読み返してみると、違う感動があった。

「読後が切ないんですよ。夫婦愛、人のどうしようもなさ、悲しみなどの“重み”が描かれています。人間関係に行き詰まって孤独を感じている人や、先の人生を悲観している人など、寂しさを抱えている人に読んでほしいですね。

 誰かがそばにいると、支え合えて素敵なこともあるけど、だからこそ背負わなければいけないことも出てくる。

 10代で読む本、30代で読む本、人を憎んでいるときに読む本、失恋直後に読む本など、読み手の状態でいかようにも作品の色は変わる。本当にいい本って、そういうもの。1対1で向き合ってくれて、自分のそのときの色を映してくれる」