都議会がどう反応するかも懸念材料

 どうして、都は新市場建設前にもっとユーザーの声に耳を傾けなかったのか。

 ほかにも店舗の間口が狭くてマグロが切れない、という問題が出ており、共通するのは使う人の立場で設計されていないということ。小池知事が招集した『市場問題プロジェクトチーム(PT)』は9月29日に初会合を開き、豊洲新市場について土壌汚染や施設の安全性のほか、交通アクセスや荷捌(さば)きなどの機能、働きやすさや事業継続性についても検討することを確認した。

 前出の中澤氏は「築地の物流効率は天下一品。全国の生産者のためになっている。できれば大事にしたいし、残したい。建て直すにしても、移転するにしてもオープンで開かれた議論が必要だと思います」と話す。

 市場関係者は引っ越し準備を中断したまま、宙ぶらりんで仕事を続けるしかない。

 小池知事は会見で、

「市場関係者は怒りを通り越してガッカリされているだろうとお察しします。本当に申し訳ない。市場を動かすのは市場関係者。東京都と引き続き一緒にやろう、という流れをつくっていかなければ、築地のブランドにしても、豊洲の新天地にしても、うまくいかなくなってしまうと懸念しています」

 と信頼回復を誓った。

 移転延期をめぐっては、この先、都議会がどう反応するかも懸念材料だろう。

 また内部調査の結果、豊洲予定地の主要建物の地下に広がる謎の空間については、いつ、誰が決めたことかわからなかったという。小池知事は「匿名、実名どちらもOK」という内部告発の仕組みを整える考えを示した。

 つまり、内部調査の対象外とされた職員から“タレコミ”を待つことになる。

 さらに知事は、市場問題だけに集中して取り組むことができない。前出の記者は言う。

「五輪施設の見直しも喫緊(きっきん)の課題。都の調査チームがまとめた報告書は、このままいくと開催費用が3兆円を超えそうだと指摘し、水泳やボート・カヌー、バレーボール会場となる3施設の整備計画を見直すことを提言した」

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は「IOC(国際オリンピック委員会)で決まったことをひっくり返すのはきわめて難しい」と、さっそく猛反発。スポーツ界を敵に回しそうな気配が漂っている。