心のセーフティネットとなる人を見つけておく

 栗本さんが「ある意味、お金よりも大切」と言うのが、親が不在になったとき、娘が頼れる人をつくっておくこと。「不在」とは、亡くなることだけではなく、大病を患ったり、認知症になったり、要介護状態になるなどの状態を指す。

 そうした場合、医療費や介護費の準備をしていたとしても、身の回りの世話は未婚の娘に偏りがちなもの。娘の相談相手が親だけの場合、精神的な負担が重くのしかかることに。

 娘にとっての叔父や叔母、近所の人、例えば、ファイナンシャルプランナーや保険会社の営業員など生活にかかる相談を受けている専門家など、「私が倒れたらこの人を頼りなさい」という相手を娘に教えておこう。

 また、相手に対しても事前にその旨を伝えておくことも必要だ。「周囲の人との関係を良好に保ち、“あの人の娘さんだから、なんとかしてあげよう”と思ってくれる人をつくりましょう」(栗本さん)

おひとり様の老後に大切なこととは

 おひとり様の豊かな老後がイメージできれば、親としても安心できるはず。ファイナンシャルプランナーとしてさまざまなケースを見てきた栗本さんに、おひとり様女性の老後にとって大切なことを聞いた。

 まず挙がったのは、老後に生き生きしている人の多くは打ち込める趣味や気軽に参加できるコミュニティーを持っていること。

 注意すべき点は、同じ境遇の友人を頼りすぎないこと。おひとり様のなかには、友人と「将来もお互い助け合って生きていこうね」と約束している人も少なくないが、ケンカで疎遠になったり、親の介護で故郷に帰るなど関係が変化する可能性も。「いつまでも今のままの状況が続くとは限らないという点も認識しておきたいものです」(栗本さん)

 女性は身の回りの家事で困る人は少ない反面、住んでいる家が古くなったときや、家電製品の買い替えなどで相談先に困るケースが多い。そういったときに備えて栗本さんがおすすめするのが、近所の家電店や不動産業者と顔見知りになっておくこと。また、保険の担当者は幅広い人脈を持っているケースが多い。自分が困ったときに助けてくれそうなキーマンをつくっておくと安心だ。

 おひとり様の女性で穏やかに生活している人は、親子仲が良好な人が多いと栗本さんは話す。そのポイントは、親からあれこれプレッシャーを受けていないこと。結婚や自身の老後のことなどわかってはいても、娘自身、今すぐどうにもできないことも多く、触れられたくないもの。

「娘さんのことが心配な場合は、“私たち(親)自身の心配事について、娘を頼って相談している”という姿勢を取ると、コミュニケーションの質が変わってくるのではないでしょうか」(栗本さん)

 コミュニケーションがとれているほうが老後の希望を伝えたり、相談もしやすい。親子仲のよさも娘に残してやれる“財産”なのかもしれない。

<プロフィール>
◎栗本大介さん
'71年、滋賀県生まれ。ファイナンシャルプランナー。エフピーオアシス代表取締役。生活経済研究所長野主任研究員。栗本FPスクール主宰。滋賀と長野を拠点に全国で講演行脚。『40代からのお金の教科書』(筑摩書房)など著書多数。