「気がつかないということが問題」

裁判を起こした名古屋学院大学の早川洋行教授
裁判を起こした名古屋学院大学の早川洋行教授
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「イラストが問題ですよね。男の子は10人いるのに、女の子は3人しかいない。バランスが悪い」と、まずは視覚的な違和感を指摘する。

「規範意識を高める」という記述のイラストでは子どもに話しかけるのは父親、「子どもが失敗したとき」のイラストの励まし役は母親。そこにも問題が潜んでいるという。

「規範意識を教える社会的な役割は男、慰めて励ますのは女。これは不平等で固定的なジェンダーです」

 女児のイラストに“ぬくもり”“丁寧に”“思いやり”男児のイラストに“元気”という言葉が添えられていることも「おかしい」ポイントで、

「男女両方にとって必要なことです。だから、男女両方のイラストを掲載するべき」

 子どものころから言われがちな「女の子らしくしなさい」「男の子らしくしろ」といった悪意のない教育が、大人になっても修正されなければ見過ごしてしまうチラシの表現。あまりにも自然な点に、

「(チラシを作った)行政に悪意があるとは思っていません。無意識なんです。ただ、気がつかないということが問題なんです。ジェンダーというのは文化ですから、古い価値観の中につかっていると気がつかないものです。だから私自身が問題提起をするしかないと思って、提訴しました」

 と、問題の根深さを語り、さらに主張を加える。

「私はジェンダーをなくせと言っているわけではない。男と女の性別文化は違っていいと思っている。だが、人間に生きづらさを与えたり、選択肢を狭めているのであれば、それはおかしいんじゃないですか、と言っているんです」