【コラム】自主避難者へ福島県の非情

 自主避難者にとって唯一の経済支援だった借上住宅の無償提供が'17年3月で打ち切られることが一昨年、福島県から発表された。いまだ住宅が決まらない避難者も多く、各都道府県も対応を始めた。

 そんな中、福島県は昨年11月、「住宅確保に必要な国への要請事項」を自治体から集めながら国に伝えていないことが取材で明らかになった。

 福島県は昨年10月末、各都道府県に、借上住宅打ち切り後の住宅確保の依頼文書を出した。「住宅確保策の実施に伴って必要となる国への要請事項を別紙によりお知らせください」とし、11月中の回答を求めていた。住宅の確保は自治体だけで対応できる場合もあるが、公営住宅においては国の通達なしには困難なケースもある。そのため各都道府県は依頼文書に「現住宅の継続入居を可能に(「特定入居」等)」「入居要件の緩和」「家賃や引っ越し費用の国庫補助(財政支援)」と回答。自主避難者の経済困窮を把握したうえでの要請だった。

 これに対し、福島県は「要請する予定ではなく、行き違い」と説明。一方、各都道府県の担当者は「福島県が国に上げる前提で書いた」「残念としか言えない」などと話す。

 自主避難者の支援に関わる福田健治弁護士は「避難先の都道府県は避難者と直接接しており、その要望は重い。福島県は何のために集約したのか」と憤る。不誠実な対応に「再び見捨てられたのか」という避難者の声も。福島県は誠意ある対応を示すべきではないだろうか。

<プロフィール>
取材・文/吉田千亜
フリーライター、編集者。東日本大震災後、福島第一原発事故による放射能汚染と向き合う母親たちや、原発避難者への取材を精力的に続けている。近著に『ルポ 母子避難』(岩波書店)