私はこのコラムに寄せられたご相談に対して、自分の年の功をかさに着て、一方的に自分の価値観で判断した答え方にならないよう、随分注意しております。そんな私ですが今回はあえて、今のままだと、あなた方夫婦に希望は無いと断言できます。あなたも気の毒ですが、何よりも子どもさんたちが負うであろう心の傷が心配です。

 21世紀の先進国日本では、衣食住さえ保証されればあとは耐え忍べという時代ではありません。あなたの夫君は、家族の人生のホームベースとなる家庭を作るどころか、前世の敵だった人の妻子に復讐しているような敵意に満ちた夫であり父親をしています。

 何らかのショック療法をきっかけに彼が変わろうと努力するなら別ですが、このままだと家族全員の不幸が待っているだけです。

子どもの将来も奪う、親の暴力

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「貧しいながらも楽しいわが家」という言葉がありますが、この言葉には本当に奥深い意味が込められています。子どもが毎日安心して楽しく過ごせ、健やかに育つ家庭作りは、裕福であることとは別問題で、親の人生観一つということです。

 愛情豊かな親に育てられた子どもの多くは素直で誠実です。人を欺くことを知りません。親を愛し尊敬し、感謝することを知る子に育つものです。それは子どもが社会に出て築く人間関係にも影響せずにはおかないものです。そして人生でもあらゆる場面で、その心持ちが力となり財産となるのです。

 病院へ行けば病人がいっぱいいるように、このコラム欄を読んでいると、世の中は家庭問題で悩んでいる人ばかりに見えます。ですがあなたの夫君に是非とも少しでも学んでほしいと思う夫・父親像の方が、実は周囲に満ちあふれているのです。大多数の夫婦は相手を警戒せず、信頼し支え合って生きているのです。

 妻子は何かが出来るから愛おしいとか出来ないから憎いではなく、存在するだけで大切な存在であるのが、まず人の本能です。年を重ねながらお互いが向上するよう助言はしますが、すること成すことにけなしたり暴力は振るいません。

 生活ができるだけ便利で楽しく豊かであろうとする親の努力や価値観は、家具その他の調度品でも表現されます。それらに囲まれて育った子どもたちは、美しいものを美しいと認められるセンスを養ったり、かけがえのない思い出をそれらに重ねるものです。