LGBTへの理解を深めるなら、LGBTの人々に思いっきり感情移入するのがいちばんかもしれない。ならばオーストラリアの人気映画をミュージカル化した『プリシラ』は、間違いなくうってつけだ。ポンコツバスで旅する3人のドラァグクィーン(女装のエンターテイナー)はきっと、観客の心をわしづかみにするだろう。

 では、主人公のティックを演じる山崎育三郎さんにとって、LGBTとはどんな存在なのかと聞くと「ごく自然に、気づいたら身近にいる存在」という答えが返ってきた。

「子どものころからミュージカルの世界にいたので、女性的な先輩が多いなと感じていましたし、当たり前に受け入れていたんです。ミュージカルってどちらかというと女性が好む、美しい世界観。なので、それを好んでやっている男性は中性的な方が多いんです。僕も柔らかいしゃべり方をするから間違えられたりするんですが。LGBTの親友もいますし、一緒にいて魅力的だなと思える方が多いです」

 これまでにも舞台での女装経験はあるし、舞台『ラ・カージュ・オ・フォール』では鹿賀丈史さんと市村正親さんが扮するゲイカップルの息子役として、先輩たちの演技を間近に見てきた山崎さん。でも、LGBTの人生に真っ正面から向き合うのは相当な覚悟がいる、という。それが名作ならなおさらだ。