肝臓がんを公表したムッシュかまやつ

 ライブイベントを体調不良でキャンセルしたムッシュかまやつが今年9月、肝臓がんを患っていることを公表した。8月に脱水症状で救急搬送された。ラジオを通じて「絶対復活するから心配しないでください!」と力強いコメントを発表している。

 肝臓がんは、肝臓にできる原発性肝がんと、ほかの臓器にできたがんが肝臓に転移する転移性肝臓がんの2つに分けられる。

「このうち原発性の肝臓がんは2種類に大別されます。肝細胞がんが9割、肝内胆管がんが1割くらいです」

 と国立がん研究センターの島田和明先生。

原因の多くはウイルス感染。C型肝炎ウイルスからが7割、B型肝炎ウイルスからが2割くらい。ともに肝硬変を経て進行します」

 C型肝炎は血液や体液を介して感染する。治療法の進化によって、近年の患者数は減少傾向にある。また、B型肝炎の主な感染経路は出産時の母子感染だが、ワクチン接種による予防が可能になって以来、こちらも感染者が激減している。

「肝炎になった人のすべてが肝臓がんになるわけではありませんが、ハイリスクなのは確かです。最近増えているのがB型、C型、どちらの肝炎ウイルスも持たないケース。その原因は、まだよくわかっていません

 高血糖や肥満といったメタボリック症候群の要因が重なる人は、肝臓がんのリスクが2倍以上になるという厚労省の研究報告もある。

「食生活や運動など基本的な健康管理に加えて、ときどき血液検査を受けることで、がんが早期で見つかる可能性もあります。信頼できるかかりつけの先生を持つことが、異常を早く察知するポイントです」

 主な治療は手術。腫瘍が3cm以下で数も少ない小肝細胞がんの場合、患部に針を刺し、熱を加えてがん細胞を死滅させる『ラジオ波療法』、がんに血液を送る肝動脈を塞ぐ『肝動脈塞栓術』を行う。腫瘍が3cm以上、3個以内で肝機能が比較的良好な場合は肝臓の切除手術が可能だ。

「肝臓は“沈黙の臓器”といわれ、自覚症状がほとんどなく、進行がんで見つかることが多い。昔より治療成績は向上していますが、肝臓、胆道(胆のう・胆管)、すい臓にできるがんは難治な場合が多く、まだまだ解決すべき問題はたくさんあります」

<この先生に聞きました>
島田和明先生
国立がん研究センター中央病院副院長、肝胆膵外科長。日本を代表する肝胆膵外科医で専門は肝胆膵領域の悪性腫瘍。放射線診断科などの他科とも密な連携をとり質の高い集学的な治療を行っている。