男性ホルモン医学の父・熊本悦明先生 撮影/竹内摩耶

「女性ホルモンが減ることは、決して悲しむことではない。男性ホルモンの力で、心身ともに元気になってください」

 そう語るのは、「男性ホルモン医学の父」と言われる、日本メンズヘルス医学会名誉理事長・熊本悦明先生(87歳)。女性が元気でいるためには、女性ホルモンだけでなく男性ホルモンも実は重要なのだそう。

「まずお話ししておきたいのが、男性ホルモン、女性ホルモンというのは便宜上の呼び方であって、男性ホルモンは、生物が子どもをつくり、無事に育つように守るといった外的環境のための活動を促すホルモン。一方の女性ホルモンは、子どもをいつくしみ、育てるための内的環境を促すホルモンです。男性も女性も、量の差はありますが、男性ホルモンと女性ホルモンを分泌しており、女性には男性ホルモンがいっさいないわけではないのです」

女性は閉経後に性欲が高まる場合も

「女性は更年期になると女性ホルモンが急激に減少し、のぼせや発汗、不眠、憂うつ感などさまざまな不調を訴えるようになります。そのため女性ホルモンを投与して補充し、症状をやわらげる方法はよく知られていますが、実は、男性ホルモンにも注目してほしいのです。男性でも女性の更年期のような症状が出ることがあります。これは、男性ホルモンの分泌が急激に減り、ホルモンのバランスが崩れるからです。

 女性は閉経後、女性ホルモンが少なくなっても男性ホルモンの分泌量はそれほど変わりません。“閉経してから性欲が強くなった”という女性がいるのは、男性ホルモンが優位になったことが理由のひとつとして考えられます。“女性ホルモンが減って、男性ホルモンが多くなるなんてイヤ”と思う方もいるかもしれませんが、いつまでも行動的でいるためにも、女性にとって男性ホルモンは大事なのです」

 実際、男性ホルモンが低下することで、虚弱体質になる女性も多いそう。

「閉経後もあまり減らないといわれている男性ホルモンですが、“どうにも元気がでない”“性欲がなくなった”と訴える女性は、男性ホルモンの低下が原因であることも考えられます。女性に対する男性ホルモンの補充にはいろいろ議論がありますが、男性ホルモンを補充して、見違えるように元気になった女性患者さんもいらっしゃいます」

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 一方、自分が元気でやる気満々でも、夫やパートナーがセックスできない状態だとどうしようもありません。男性ができなくなる原因にも、男性ホルモンが関わっています。