医療ミスの疑いがある場合、原因の7割は、“医師と患者の意思疎通がうまくいっていないため”と指摘する調査もあります」

 最近増えているのがインターネット普及の弊害。その名も『グーグル病』だ。

例えば《頭痛 リンパの腫れ》などと、気になる症状を検索して《白血病》が出てきたら、自分もそうだと信じ込んでしまう。医師にも、『白血病だと思うんです』と診断を受ける前から決めつけたような言い方をする。これではきちんとした診断を受ける気がなく、薬だけくれと言っているように見えてしまいます」

生き方や価値観にも関わってくる問題

ひとつひとつの説明はしていても、治療の全体像やどう病気が進行していくか、その状況下で今、何を決めなくてはいけないのかといった話をしていない医療者が結構います

 と岩本さん。前出のNPOへこんな相談があった。脳梗塞で入院中の母を持つ娘。病院から胃に穴をあけて直接、栄養をとる“胃ろう”の提案を受けたが、決めあぐねている状況だったという。

病院から“かなり厳しい状況”と聞いている。胃ろうや、鼻から管を入れるといった処置についての説明も受けている。ただ、お母さんが今後どうなっていくかという説明はされていない。医療者から見れば、おそらく転院や施設への入所を暗に促してくるだろうな、とわかるケースでした」

 先が見えないなかで決断をするのは難しい。

「娘さんは“本当にダメなら家に連れて帰りたい”と言うので、医師にそう伝えたうえで話し合いの機会を持つよう助言しました」

 治療法を選ぶということは生き方や価値観にも関わってくる問題。まず自分がどうしたいのかわからなければ、聞き上手な医師であってもお手上げだ。

「“がん治療のガイドラインにない手術を受けたい”との相談を受けたことがあります。セカンドオピニオンを求めて7つの病院を渡り歩き、5つが手術に反対、2つが手術に賛成。結局、どちらが正しい判断かわからないという話でした」

 岩本さんと話をするにつれ、相談者は「身体の中にがんがあることが耐えがたい。リスクがあっても取り除きたい」という自らの意思を確認できた。だが、このやりとりを“3分診療”に求めるのは無理がある