親の介護をきっかけに

 また、親の介護をきっかけに卒婚へと流れるケースも少なくありません。両親が卒婚したという47歳のフリーライターの女性は、子どもの立場から卒婚に賛成しています。

「うちは祖母の介護をきっかけに父親が実家に戻りました。しかし、すごい田舎で山と畑しかなく、車がないと生活できない場所。都会暮らししか経験がない母は、そんな田舎でずっと暮らすのは無理と、たまに手伝いに行く生活が続いていました。

 その後、祖母は亡くなりましたが、父はこれからも生まれ育った場所で暮らすことを選択。母はこれまでどおりの都会暮らしを選び別居生活が続いています。母は70代、父は80代になり、なかなか移動が大変なので、会うのは1年に数回。けれど、毎日30分以上、電話で話していますし、夫婦の絆は変わっていません。父も母も、ひとりでのびのび暮らしているせいか、持病もなくて元気。子どもから見ても卒婚してよかったと思っています」(フリーライター)

法律上の問題も

 一方、結婚という状態を維持しているとはいえ、「法律面では気をつけたほうがいい」と、青山外苑法律事務所の秋田一惠弁護士は指摘します。

「例えば卒婚をして別居を続けていたとき、夫に新しい女性ができて、“離婚してほしい”と言われたとします。妻が“離婚したくない”と言っても、長く別居を続けていると、婚姻関係が破綻していると裁判所が考え、すんなり離婚が認められてしまうこともあるのです。

 また、財産分与についても、卒婚後に築いた財産は共有財産ではない、と考えられる可能性も。もめごとを起こさないために、卒婚をする前に、弁護士のところに行き、お互いの取り決めについて契約書を作るのもおすすめです。

 卒婚は終活のひとつとしてもとらえることができますし、夫婦の今後の生き方を見直すきっかけにもなります。これを機会に、お金やお墓のことについて話し合うのもいいでしょう」(秋田弁護士)

 しかし、そもそも、卒婚という形をとらなければならないのが、女性にとって日本の婚姻制度がどれだけ不自由であるかを表しているという秋田弁護士。