「駆けつけ警護」の新任務が可能になるなど安保関連法は本格始動、憲法改正への流れも固まりつつある。大きな曲がり角に立つ平和国家ニッポン。未来を志向する前に、過去をありのまま見つめ、今をとらえて課題に向き合うための「言葉」を探りたい。戦争の危機感を鋭く表現した映像作品『兵士A』が話題のシンガー・ソングライター七尾旅人(ななお・たびと)に聞いた──

シンガー・ソングライターの七尾旅人

「彼は鈴木くんかもしれないし、山田くんかもしれない」

 暗がりの中、迷彩服に身を包んだ丸刈りの青年がラジオをチューニングしている。ノイズに混じって聞こえてくるのは、子どもたちの声。

《戦後生まれのお父さん、お母さん、ありがとうございます。僕たち、私たちは、大きくなりました。そして今、戦前を、戦前を生きています。》(『戦前世代』より)

 シンガー・ソングライターの七尾旅人が発表したライブ映像作品『兵士A』は、こんなシーンで幕を開ける。

 戦後71年にわたり殺し、殺されることのなかった自衛隊に、初の戦死者が出るかもしれない─。そんな予兆を真正面からテーマに据え、七尾は、“戦後1人目の戦死自衛官Aくん”に扮して彼の生涯を歌う。Aくんを取り巻く人々を縦糸に、戦後日本の足取りを横糸にして、いびつな平和国家の姿を美しいメロディーにのせて織り上げる。

《1人目の彼はどんな人だろう 1人目の戦死者Aくん 1人目の彼はどんな人だろう 何十年目の戦死者Aくん》(『兵士Aくんの歌』より)

 七尾は言う。

「自衛隊の若者が戦死するリスクはかつてなく高まっているけれど、まだまだ関心がない人は多い。彼は鈴木くんかもしれないし、山田くんかもしれない。想像してもらえるように(匿名性の高い)兵士Aとしたんです