草なぎ剛

 SMAP解散後、初のドラマ主演となった『A LIFE〜愛しき人〜』(TBS系)の木村拓哉と、『嘘の戦争』(フジテレビ系)の草なぎ剛。

 視聴率争いの軍配は木村に上がったが、「低いとはいえ今期の初回最高視聴率(14・2%)というところで面目を保ってしまったことで事態は深刻化」と、辛口コラムニストの今井舞さん。今回はふたつのドラマを斬ってもらった。

「キムタクは飛躍のチャンスだったんです。SMAPの看板もなくなり、世間から裏切り者のレッテルを貼られたからこそ、あえて汚れ役にチャレンジするなど、今までと違う面を見せるべきだったのに。カッコいい俺をひたすらカッコよく見せたいという、これまでと何も変わらないオレ様ドラマをやってしまった。

 前クールであれだけ盛り上がりを見せた『ドクターX』の直後に医療モノを持ってくるなら、設定やシナリオによほど凝ったモノをぶつけなければヤケド必至なのに、『A LIFE』のペラペラさは、筆舌に尽くしがたいレベル。鳴り物入りで海外から帰ってきたオペ上手という設定なのに、大手術の次は予定もなく、人の手術を見学してたり、心臓外科医なのに脳腫瘍の手術を頼まれたり。“家族は切れないから”って、理由そんだけ!? 

 ほかの脳外科医当たればいい話だろ、という日本全国からのツッコミが聞こえてきそう。すべての筋運びが、ただキムタクにスポットライトを当てるためだけのご都合主義。豪華キャストを謳っておいて、あんな演じがいのない役をふるもんだから、浅野忠信や松山ケンイチたちの劇中の目がもう死んじゃって(笑)。権力を振りかざして作ってこの出来じゃあ、メンバーだけでなく、業界からもお茶の間からも愛想を尽かされるのは時間の問題かと。

 その件をふまえて見ると、草なぎは怒りと憎しみの表情で仇敵を睨みつける陰のある役で、視聴者が感情移入しやすいというか。あの顔を見ると、誰もがつい“草なぎクン……つらかったね(泣)”ってなりますからね。

 ただ、話の内容はお粗末。天才詐欺師という触れ込みなのに、イマドキ“企業の情報を手に入れるため、仲間の水原希子がお掃除おばさんになって潜入!”とか、手口が昭和。21世紀の今の時代を反映した詐欺の手法を何ひとつ見せてくれない。そういうところで、あっと驚く仕掛けを施して、物語の世界に誘ってくれないと。同情だけでは視聴者は惹きつけられません」