古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第15回は樋口卓治が担当します。

稲垣吾郎 様

 今回、私が勝手に表彰するのは、稲垣吾郎である。

稲垣吾郎

 芸能界に殩然(さんぜん)と輝いていた星座は、今、五つの星となり、それぞれ新たな光を放っている。その中で今、稲垣吾郎の瞬きに魅せられる。

 かつて、自分の中では「Mr.マイペース」とか「ドライヤーの風に吹かれて」というイメージが先行していたが、最近、あの雰囲気に憧れるのだ。

 稲垣吾郎の良さがわかる年頃になったのだ。

 例えば、深夜TBSでやっている『ゴロウ・デラックス』は癒される。

 毎回、課題図書をしっかりと読み込み、司会者が目立つことをせず、ゲストに気持ちよく話をさせるスタイルを貫いている。

 日々朝から晩まで会議を渡り歩き、ど深夜に小説を書くというブラック個人商店を営んでいる私にとって、あのゴディバのチョコのような甘い声の朗読はアロマ効果がある。あれによって著者は報われ、視聴者は癒される。

 以前、私が原作者として番組にお邪魔させてもらったとき、根も葉もない妄想トークをしようということで、『もし、この番組が打ち切りになったらどうします?』という質問をした。

 バラエティとしては、「なんてこと言うんですか⁉︎」と慌てふためく司会者を想定していたのだが、稲垣吾郎は動じることなく、真摯にそのテーマに付き合ってくれた。

 そして、この番組がとても大事で大好きであると語った。今、その言葉の意味がとてもわかる。画面から番組に対する優しい愛情が滲(にじ)み出ているからだ。