輪番制より立候補制のほうが管理組合運営に熱心な人が多いという声もあります。しかし、必ずしもそうとは限りません。一部の人が理事を独占して、他の人が無関心で、かなり問題がある運営がされているケースもあるのです。そんな事情は、そのマンションに入居して、管理組合のなかに入るまでわからないことです。

 もっと客観的に評価できて、ここだけチェックすれば、「管理がいい」と判断できるという項目がないか。こうしたことを筆者が長年考えてきて、ひとつの結論にたどりつきました。ずばり「管理組合はおカネで見る」ということです。

50年先まで見据えるマンションに注目

 さまざまな価値観をもつ人の集合体である管理組合に「おカネ」があるかどうかは、個人の問題以上に、ものすごく重要なことです。「おカネ」からはさまざまなものが見えてきます。

 特に重要なのは、将来必要な修繕工事のためのおカネを積み立てる「修繕積立金」です。積立方式には2種類あります。

 ベストなのは、必要な額を均等に割って積み立てる「均等積立方式」です。同じ金額を着実に積み立てていけるというメリットがあります。

 しかし、分譲時に売り主が示すものは、当初の積立額を低く抑え、5年ごとに段階的に増額していくことを盛り込んだ「段階増額積立方式」がほとんどです。なぜなら、ローン返済額と管理費や修繕積立金の額を合わせた月々の必要額が高いと、買い手を躊躇させるからです。そこで売り手の側には、管理費等を当初できるだけ低く抑えて、必要金額を安く見せて売りやすくしたいという意図が働きます。

 このような経緯で、「段階増額積立方式」によって当初低く抑えられた修繕積立金の額を、管理組合が、いつの段階で、何年計画をもって見直すかということがマンションの未来にとって大変重要なことになります。

 では、一般の購入予定者は具体的にはどこをどう見ればいいでしょうか? まず、自分が毎月払う「修繕積立金」の額を確認します。ただし、単純に金額が大きいかどうかではなく、その額が何年後までの必要工事を満たせる額になっているか、将来値上げの必要はないか見ることが重要です。これは管理組合に長期修繕計画書を開示してもらうことで確認することができます。

 国交省が示す修繕積立金の計画期間の基準は、新築時30年、その後は25年です。しかし、管理のよいマンションでは、高経年でも30年、築年数の浅いマンションでは50年計画をもつところも最近出てきています。

 若い世帯は、新築マンションを50年先まで住み続けようとまでは思わず、途中で売却を考える人も少なくないでしょう。一方、年金暮らしの世帯は、終の住処として購入しており、途中で修繕積立金が大きく値上がりすると困るというケースもあるでしょう。

 このように、さまざまな考えの人が集まったマンションで、50年以上先までの工事費用を今から積み立てようという合意形成ができているとしたら……。そこは、コミュニティがしっかりしていて、熱意をもって管理組合運営にあたる核となる人がいるマンションだと筆者は確信しています。