昨年10月に行われたオータムクラシックでは、スタミナ切れが見て取れました。その後、1日3食に補食をつけるほど、食事量を増やしたそうです。

 体脂肪を増やしたのではなく、その分の筋肉の量を増やし、演技後半でも失速せずに攻めの演技ができるような身体を完成させたそうです。ソチ五輪のころと比べても、太ももがかなり太くなってます」(スケート連盟関係者)

 もともと171cmで53kgと線が細く、海外の一部の解説者から“ペンシルボーイ”と揶揄されるほどだったゆづクン。

「ジュニアからシニアに上がりたてのころは、スタミナが足りなくて、演技後半はバテバテでした。ソチ五輪のときも、日本代表のサポーターである味の素に食事のサポートを受けていました」(前出・スポーツ紙記者)

 ただ、そこには落とし穴も。過度の筋肉量の増加は、身体のキレを奪い、ケガに直結しかねないなど、デメリットも潜んでいる。

「4回転ジャンプはスタミナを使うってもんじゃない。本当に4回も5回も跳ぶ人の気が知れない(苦笑)。それくらい大変なことなんですよ。

 当然、4回転の種類が増えてくるということは、前半では跳びきれない。後半であれば、採点も1・1倍になり、有利になる。でも、そのためにパワーを重視して筋肉をつけると、体重が増加する。重力に逆らうジャンプにおいて、そのプラスマイナスを見極めることが難しい。着氷時の衝撃度を考えれば、足元のケガにも注意を払わないといけない」(佐野氏)

コーチに猛反対されても貫き通した信念

 すでに4回転時代に突入した今、バランスという点では、4回転ジャンプの試技回数やコンビネーションプランも大切になってくる。

 羽生と同じくオーサーコーチに師事するハビエル・フェルナンデスは、「高難易度ジャンプが跳べても、演技の中に落とし込めなければ意味がない」と話し、トゥループとサルコーの2種類の4回転だけで勝負している。

羽生選手が4回転ループを取り入れるにあたり、“できることを完璧に表現したほうが、高得点につながる”とオーサーコーチから猛反対されたんです。でも、彼は自分の信念を通した。そして、自分自身をあえて成長させるために追い込んでいるんでしょう」(前出・連盟関係者)

 フィギュアスケートは一連のスケーティングの中で技を繰り出すもの。ダイナミックなジャンプだけが目立つのではなく、華麗な滑走の流れの中で自然に取り込むことでハイスコアを競うスポーツだ。