「ブス!」「無能!」職場の先輩の陰湿パワハラを訴えたい!
「ほかの人に聞こえないように言ってくるのであれば、要件である公然性が否定されるため、名誉毀損罪や侮辱罪には該当しません。適用されるとしたら、パワーハラスメント。民法上の不法行為を受けたとして、損害賠償請求ができます」
と、佐々木弁護士。
でも、それには証拠が必要。無断録音はセーフ?
「問題ありません。防衛のために自分の会話を録音することはむしろ重要。また、自分の耳に届いてくる範囲の周囲の会話を録音することも大丈夫です。
一方で、第三者の会話を勝手に録音すること、例えば、会議室に盗聴器を仕掛けたりするなどの行為は建造物侵入罪で訴え返される可能性もあるので、むやみにやらないように」
お皿を割ったらバイト代から弁償ってあり?なし?
佐々木弁護士によれば、
「わざとやったのならアウト。損害賠償請求をされても仕方ない。ですが、過失によるものなら原則、弁償する義務はありません」
この理論の根底にあるのが、報償責任という「雇い主は従業員を使って得るプラスの利益もマイナスの利益も負担すべきだ」とする考え方。
「ただし、過失が大きいと一定程度の責任追及が認められることもあります」
では、風邪などで休んだ場合、バイト代から “罰金” を差し引かれるのは?
「今年1月、コンビニでバイトの女子高生が風邪で欠勤した際、9350円のペナルティーを取っていたとして大問題になりました。罰金としてバイト代から差し引くのは明らかな違法。取り戻すことができます」
転職決定後、「有休を消化したい」と言って却下された
「おかしいです! 有給休暇は労働基準法で認められた労働者の権利。社内で前例があるなしにかかわらず、会社は有給休暇の申請を拒否することはできません」
と、佐々木弁護士は強調する。
「有給休暇は会社員の権利ですから、申請に正当な理由は必要ありません。たとえ買い物や旅行が理由でも、そもそも理由を言わなかったとしても、申請を受けなければならないのです」
ただし、繁忙期などで明確に業務に支障が出る場合は、会社は時季変更権を行使することができる。
業務の引き継ぎがあるから退職日ギリギリまで出社して、と頼まれた場合は?
「時季変更できる日数が残っていないので、断ってもかまいません。が、角が立つなら、有給休暇の買い取りを交渉することは実務上は、認められています」
それが無理なら、退職日を延ばしてもらう交渉をしてみても。いずれにしても、泣き寝入りはしないが〇。
<プロフィール>
◎法律事務所アルシエン・清水陽平弁護士
インターネットトラブルをはじめ労務問題や債権回収、男女問題など多様な案件に携わる。企業や専門家に向けての講演にも精力的。
◎旬報法律事務所・佐々木亮弁護士
パワハラ、過労死など労働問題の第一人者で日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団では代表を務める。