サラリーマンに混じってチャーハンをかき込む姿

 リンクのすぐそばの『互楽亭』へ初めて来たときは、匡子さんと舞と3人だった。やがてひとりでも足を運ぶようになり、女子中学生が黙々とチャーハンをかき込む姿は、サラリーマンの多い店内でちょっぴり浮いていた。

「身体は細いのにペロッとキレイに食べるんですよ。しかも、スピードも早い(笑)。気持ちよかったですね」

 店主の井上一夫さんは、懐かしそうに目を細める。彼女がチャーハンばかり頼むので、いつしか『真央ちゃんチャーハン』という名前に変わった。東京へ出てからも、この店への愛は変わらない。

名古屋での収録の際“チャーハンが食べたい”と言ってくれたようで、スタッフさんが取りに来ました。うれしい反面、本人に会えずに寂しいなと思っていたら、あとで、真央ちゃんが来たんですよ。“ちゃんとお礼を伝えたくて”って。律義なんです」(井上さん)

 そして、引退を発表したその日。大会のたびに戦勝祈願をしていた大須観音にお礼参りに訪れた彼女は、互楽亭へも足を運んでいたというのだ。

お客さんから“真央ちゃんが店をのぞいてたよ”と聞いたんです。うちはちょうど発表した日が定休。会いたかったから、残念でした」(井上さん)

「あそこは行きました?」「家で作るときは……」などと、常連客と楽しく話していたのは、大須のかき氷店『あんどりゅ。』。

 気さくに話しかけるので、本人と気づかれないことも多い。1度来店すると、2つのかき氷をペロリと平らげる。店員の金森春菜さんいわく、最近は、ずんだがお気に入り。

『あんどりゅ。』のかき氷はどれも大ぶり
『あんどりゅ。』のかき氷はどれも大ぶり
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「生クリームののったかき氷をよく食べていて、多いときは1か月に3回以上、来たこともあります」(金森さん)

 高校・大学時代に通ったうなぎ店『今勝』では、備長炭で焼いた天然うなぎをペロリ。ときには、コーチのタチアナ・タラソワを連れて訪れた。

店名から選手もゲン担ぎで通っています。五輪のときは店に横断幕を張り、みんなで応援していました」(常連客)

 彼女を支えた人たちの思い出には、当時の“浅田真央”が笑顔で刻まれていた─。