【甲信越・東海】静岡に”加藤さん”が多いのは徳川家に縁が!?

■新潟──斉藤と斎藤の境目

 県トップ3は佐藤、渡辺、小林の順。そして6位に斉藤、30位に斎藤と、2つの“さいとう”がランクインしている。新潟&長野より西は“斉藤”、それより東は“斎藤”が多く、新潟はその境目といえる。

「新潟を代表する名字は、県7位の長谷川や10位の五十嵐(いがらし)ですね。ただ、新潟には“いからし”と濁らない人もたくさんいます」

 熊倉、風間、皆川、笹川なども新潟らしい名字。

■山梨──渡辺さんNo.1県

 渡辺は全国5位のメジャー名字。しかし、都道府県別のランキングで1位なのは山梨だけ。トップ50に深沢、雨宮(あめみや)、志村、保坂、中込(なかごみ)、依田(よだ)、名取が入るなど、独特の名字が多い。県60位の藤原は、全国的には“ふじわら”と読むが、山梨では86%が“ふじはら”。同様に梶原、萩原も“かじはら”“はぎはら”と読むのが7割以上。

■長野──唯一の小林さんトップ

 小林が1位の県は長野だけ。しかも2位の田中に2倍以上の差をつける圧勝っぷり。県トップ50に宮沢、柳沢、滝沢、西沢、中沢、北沢、松沢、吉沢など“沢”がつく名字がズラリ。

「アルプスを抱く長野には、地形的に沢が多いという背景があります」

 宮下、赤羽(あかばね)、唐沢なども長野らしい名字。珍しい名字には織田大原(おだおおはら)、杏(からもも)、輪地(そろじ)、森井泉(もりいずみ)、位高(やごと)など。

■岐阜──加藤が1位は岐阜だけ

 全国ランキングでも10位に入る加藤だが、県単位で1位なのは岐阜のみ。愛知や三重など、濃尾平野に特に多いが、ルーツは“加賀(石川)の藤原”。県のトップ50には高木、浅野、田口、村瀬などが入り、日比野、長屋、小栗、鷲見(すみ)、棚橋なども岐阜らしい名字といえる。

「板取村(現・関市)の村会議員選は定数12に対し15人が立候補。うち13人が長屋だったことも」

■静岡──鈴木がもっとも集中

 静岡の特徴は、何といっても鈴木。特に県西部に集中し、堂々の県No.1。熊野信仰を支えた鈴木一族のうち、もっとも繁栄したのが三河(愛知)の鈴木一族で、徳川家康に仕えた。「家康が三河→浜松→江戸と居を移す中で、鈴木一族も帯同し、東日本に鈴木が広まりました」

 杉山が県5位なのも特徴的。佐野、大石、増田、村松も多い。県トップ100には芹沢(せりざわ)、池谷(いけや)、青島、袴田(はかまだ)などが。

■愛知──鈴木、加藤、伊藤が3強

 愛知のトップ3名字は鈴木、加藤、伊藤。4位以下を大きく引き離して多い。鈴木は三河地方に圧倒的に多く、加藤は尾張の東部に集中。

「瀬戸市では、人口の1割弱が加藤。小さな村ではなく、10万人規模の市においてこの傾向は、非常に珍しいです」

 いかにも愛知という名字は、県13位の杉山と、26位の神谷。さらに鬼頭(きとう)都築(つづき)なども。

<教えてくれた人>
森岡浩さん◎姓氏研究家。歴史学や地名学、民俗学などを踏まえつつ、名字を実証的に分析している。『人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!』(毎週木曜午後7:30~NHK総合)レギュラー。著書も多数。http://www.office-morioka.com/