千葉県の一戸建てで孤独死が発生。体液が床下まで染みわたったため、この家は結局、解体することとなった

 さらに引用を続けます。

《京子さんが亡くなった場所は一目でわかった。長椅子の先にある小さなミニテーブルが、ピンク色のバスマットや花柄のフロアマットで何かを隠すかのように不自然に覆われていたからだ。そこに近づくにつれて、臭いが一段ときつくなる。外の階段まで漂ってきた臭いは、どうやらそこから発生しているらしかった。

 2枚のマットをそっと外すと、テーブルの上には飲みかけの水とスポーツ飲料の入った2リットルのペットボトル2本、ティッシュペーパーの箱が置いてあった。

 視線を下に向けていくと、花柄のマグカップと白いマグカップが無残になぎ倒されていて、それらが京子さんの体液なのか皮膚なのかもはや判別がつかなくなった、どす黒いタールのような液体の上に浮かんでいた。すぐにそれは液体というより、液体が干からびた粘着質っぽい塊であることがわかった。

 テーブルの手前には底の深いお皿があり、どす黒い液体で満たされていた。食べ物と腐敗液が混ざったのだろう。テーブル上の液体は、かなりの量が下に零れ落ちたようで、床に敷かれたイグサのマットにも50センチ四方にわたってしみ込んでいた》

 京子さんが亡くなったのは、まさにこの場所だったのです。そして、食事中に京子さんの身に何かが起こったのは明らかでした。

孤独死は高齢者だけの問題ではない

 こういうふうに書くと、悲惨な現場の描写ばかりが続くように思われるかもしれませんが、本書は孤独死のリスクに警鐘を鳴らすグロテスクな話だけではなく、孤独死が発生するメカニズムの解明や、孤独死防止に向けた解決策についてもさまざまな角度から探っています。

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 亡くなっても何日、下手したら何か月も発見されない孤独死を防止するには、その前段階ともいえる「社会的孤立」に注目する必要があります。実は、OECDの20か国の中で、家族以外の人との交流がない人が、日本は最も高いのです。

 さらに、内閣府が実施している平成27年度の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、日本の高齢者の4人に1人は友人がいないといわれています。

 孤独死というと高齢者の問題だととらえられがちですが、決して高齢者だけの問題ではありません。「社会的孤立」の度合いが高いのは、高齢者よりも団塊ジュニア世代やゆとり世代の現役だという研究結果もあります。つまり、孤独死は高齢者だけでなく、全世代の問題だといえます。

 昔と比べて、社縁、地縁、血縁、趣味縁などのさまざまな「縁」から遠ざかりつつある私たちは、今後そのような「縁」を、どのように作ればいいのか。本書では、著者の私と年の近い若者の孤立にもスポットを当て、自らの手で「縁」を手繰り寄せ、孤立から脱した人たちの軌跡をたどっています。どの世代にとっても、もはや他人事ではない孤独死ですが、この本が「縁」を探す手助けになればと思っています。


<著者プロフィール>
菅野久美子(かんの・くみこ)
1982年、宮崎県生まれ。ノンフィクション・ライター。
最新刊は、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)。著書に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)などがある。孤独死や特殊清掃の生々しい現場にスポットを当てた、『中年の孤独死が止まらない!』などの記事を『週刊SPA!』『週刊実話ザ・タブー』等、多数の媒体で執筆中。