今週末は、お金に生活、健康と、世間のさまざまな”平均値”を特集したが、記事を目にして、平均より上だったり下だったり、まさに“平均さん”だった、という人もいるかもしれない。はたしてどんな結果になった人が幸せなのだろうか? 識者と一緒に考えてみた。

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「自分の価値をお金で表すとしたら、いくらですか?」

 広告代理店アサツーディ・ケイが行った調査でこう問いかけたところ、その平均額は女性が約1億2900万円、男性は約1億9800万円。 

 生活経済ジャーナリストのあんびるえつこさんは、

大卒の生涯賃金は女性が2億2000万円、男性は2億7000万円ほど。働く価値で測っているとしたら、この結果はちょっと過少評価といえそう。ちなみに、人体を物質的価値で考えると、水素、炭素、窒素などで、せいぜい数万円と聞いています(笑)」

 作家でミュージシャンのドリアン助川さんは、

「なんだか謙虚。“大きな夢を見ると傷つく”って、バブル崩壊あたりから大人たちはつぶやくようになり、今は堅実で小さな夢に向かう子どものほうが“賢い”といわれる時代。そのへんの常識が、この値段設定にも表れている気がしますね」

 私はプライスレス! と叫ぶのでなく、慎ましく自分を値踏みする日本人。また同じ調査で「次の5項目(仕事力・経済力・性格・ルックス・これまでの人生)を100点満点で評価したら」と尋ねたら、『自分のこれまでの人生』につけた平均点は60点だった。

<自分を採点したら?>
・仕事力(64点)
・経済力(46点)
・性格(58点)
・ルックス(51点)
・これまでの人生(60点)
※各項目100点満点

「周りを見ると、ほぼ同質の人たちに囲まれて生活していませんか。“周囲と比べて自分は平均的、でも、やつよりもちょっとはマシ(なハズ)”で、60点前後になるのでは」(あんびるさん)

「これまた謙虚ですね。やりたいことが10あるとしたら、そのうち5つか6つ実現できれば人生御の字、という感覚が日本人のまさに“平均的な考え方”かもしれない」(助川さん)

 他人との比較で自分の価値をはじき出す。これは日本特有の傾向なのか。世界に目を向けてみると、国民の自由度や社会福祉制度などをもとに算出した国連の“幸福度”に関する調査では、日本は155か国中51位

 

「幸福がどこから生まれてくるのか。それが経済的充足だけではないことは、このランキングが表している。例えば、メキシコ(25位)なんて経済崩壊に近い状態でもみんな明るく生きている。金も地位もなくても、俺の人生幸せだなと思える人は思えるわけです」(助川さん)

 また作詞家の及川眠子さんは、

「幸福の定義は非常に難しい。自分は今の生活に満足していない。でも、不満はないという人はとても多い。“満足”とは、“不満”とは何か? そこまで突き詰めていかなければ、真の答えは見えてこないでしょう

 幸福度は平均値では測れない。助川さんは言う。

誰だってどこかがいびつだし凸凹している。もしすべて平均値をそろえた人間がいたら、それこそ変。呪縛のような平均値から解放され、自らが望む人生を切り開いていきましょう

【出典・参照】自分の値段、点数……ADK「日本の平均調査」2014、世界の幸福度……国連「WORLD HAPPINESS REPORT 2017」、国内の性別・年代別幸福度……第一生命経済研究所「30~89歳の男女800名に聞いた『幸福度調査』」

<プロフィール>
あんびるえつこさん◎生活経済ジャーナリスト、「子供のお金教育を考える会」代表。新聞社を退社後、各メディアで家庭経済に関する記事執筆を続ける傍ら、講演活動も精力的に行っている

ドリアン助川さん◎作家、ミュージシャン。’15年、ハンセン病の元患者である女性の人生と周囲との交流を描いた小説『あん』(ポプラ社)が河瀬直美監督によって映画化され大ヒットを記録

及川眠子さん◎作詞家。Wink『淋しい熱帯魚』、やしきたかじん『東京』、新世紀エヴァンゲリオン主題歌『残酷な天使のテーゼ』などヒット作多数。モットーは「自分で自分を決めない」