メガホンをとったのは『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』などの吉田大八監督。リリーとは同い年で、撮影へのアプローチがわかりやすかったそう。

「お互いが10代や20代のときに聴いていた音楽や、当時カッコいいと思っていたミュージシャンが似ていたんです。トーキング・ヘッズとか、ゲイリー・ニューマンとかね。“明日の撮影はこんなイメージなので、見ておいてください”ってYouTubeのリンクを教えてくれて、それを見て、僕も感覚的に拾って芝居するって感じでした」

リリー・フランキー 撮影/佐藤靖彦
リリー・フランキー 撮影/佐藤靖彦
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専業の俳優じゃないからこその、芝居への向き合い方

 昨年は『SCOOP!』『聖の青春』など、8つもの出演作があり、クセのある役も自在にこなしてしまう印象が強い。イラストレーターや作家だけでなく俳優としても活躍しているが、どこか余裕すら感じさせる。

「俺は専業の俳優じゃないですから、あんな役やりたいとかこんな役やりたいって気持ちはないんです。いただいた役を全部やるっていうふうに仕事もできないですし。

 だから自分が“この台本、面白いな”とか、“この監督と仕事したいな”と思ったものだけを受けるようにしています。初めて映画に出たのが35歳のときですからね。そりゃ俺だって、広瀬すずに壁ドンとかしてみたいですよ? でも、なかなかそんな役こない。せいぜい、父親役でしょうね(笑)」

 “芝居”との向き合い方を聞くと、

「監督に言われたまんまやるだけです。この間、ピエール瀧と飲みながら話してたんですよ。“俺らみたいのが監督に『こういう感じでやりたいんですけど』って意見だしてたらうっとうしいよね”って(笑)。今回は圧倒的に、“吉田大八と仕事がしたい”から参加させてもらいました。だから監督に教えてもらってやってることがほとんどです。役作りをすればするほど、役から離れるってこともあるかもしれないですから」