江戸の創作料理と恋の行方にも注目

 黒木は、着物姿での演技に調理、澪が画面に登場しないシーンはないというほど過酷な撮影だが、常に自然体に見えるという。

「先日、原作者の高田郁さんがスタジオに来て、澪に扮する黒木さんを見て“澪そのものです”と、感嘆していらっしゃいました。和装が似合い、イメージにぴったりということもあるのでしょうが、それ以上に黒木さんが“澪”という役を自分のものにしているから、そう見えるのだと思います。

 料理の稽古を重ねることはもちろん、脚本の読み込み方の深さ、的確さ、想像力が“澪”という人物に投影され、役と俳優が一体になっているのだと思います」

 ドラマでは、澪と“つる屋”の常連客、小松原(森山未來)、澪に一途な思いを寄せる医者の源斉(永山絢斗)の恋愛も見どころ。

「非常に魅力的な話になっています。この先の澪と小松原の恋物語には、僕も涙しました。源斉の思いに澪が気づくのかにも注目を」

澪は、料理に厳しい指摘をする小松原(右)に、次第に惹かれていく。左は、澪に料理を任せている種市 (c)NHK
澪は、料理に厳しい指摘をする小松原(右)に、次第に惹かれていく。左は、澪に料理を任せている種市 (c)NHK
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 季節によって変わる澪の着物の着こなしは要チェック。華美ではないが、襷(たすき)や帯のワンポイントでかわいらしさが表現されている。これは『あまちゃん』などを手がけた人気スタイリストの伊藤佐智子によるもの。

「芸達者な俳優さんの演技、江戸時代の創作料理など、さまざまにお楽しみいただける作品に仕上がっていますが、テーマにしているのは、“おいしいというのは、どういうことか?”。澪が作る料理には、自分を助けてくれた種市への思い、料理修業のために、なけなしの金をはたいてくれた芳への思いがこもっています。上手に作るだけでなく、おいしいとはどういうことか、を感じられるのが、見どころです」

 ドラマに登場した料理は、エンディングに“澪の献立帖”のコーナーとして紹介。澪がシステムキッチンで料理している。

「原作者の高田先生が、執筆の際に実際作った料理ばかりです。ドラマを見て、“食べてみたい”と思ったり、“おいしそう”と感じた方に向けて、作り方もご紹介したいと思ったのです。意外に手軽で、近所のスーパーで買った食材で作れます。澪のように、誰かのために、心をこめて作ってあげたいと思っていただけたらうれしいです」

エンディングで料理の作り方を紹介。“はてなの飯” (c)NHK
エンディングで料理の作り方を紹介。“はてなの飯” (c)NHK