『光をくれた人』●監督:デレク・シアンフランス/出演:マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィキャンデル、レイチェル・ワイズほか/上映時間:2時間13分/イギリス・ニュージーランド・アメリカ/配給:ファントム・フィルム 2017年5月26日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほかで公開 (c)2016 Storyteller Distribution Co., LLC

 ズシリと手ごたえのある大人のラブストーリーを見てしまった。主人公は心から愛し合うカップルで、ふたりには娘がいるが、そこには“ある秘密”が隠されている。それが明らかになる後半の展開に思わず息をのみ、最後は涙が止まらない……。まるで“『八日目の蝉』の海外版”と呼びたい感動作に仕上がっている。

 舞台は20世紀初頭のオーストラリアで、灯台守となったトムは戦争後、心を閉ざしながら生きている。しかし、やがては快活なイザベルと愛し合い、結婚を決意する。幸せな時間が過ぎていくが、不運にもイザベルが流産してしまう。そんなとき、見知らぬ男の死体と赤ん坊がボートで島に流れつく。夫婦は男のことを誰にも知らせず、その赤ん坊を自分たちの子どもとして育てる。しかし、夫は娘の本当の母親のことを知り、自分が犯した罪の重さに気づく……。

 主人公たちは善良な性格で、幼い娘を心から愛しているのに、子どもの過去をめぐって、やがては窮地に立たされてしまう。罪の意識に悩む夫、精神のバランスを崩す妻、死んだと思っていた娘との再会を望む母。孤独や不安と向き合いながら、愛する人への思いを貫こうとする人物たちの熱いドラマに心をゆさぶられる。

 主人公のトム役はハリウッドを代表する演技派の渋いイケメン男優、マイケル・ファスベンダー(「それでも夜が明ける」)で、さすがの存在感を見せる。イザベル役は昨年の『リリーのすべて』でオスカー受賞の注目の女優、アリシア・ヴィキャンデル。この映画をきっかけにふたりは実生活でも恋が芽生えたそうだが、それも納得のステキなカップル! 共演はオスカー女優のレイチェル・ワイズ。出演者たちから繊細な演技を引き出したのは『ブルー・バレンタイン』のデレク・シアンフランス監督。

 孤島の大自然の風景も美しく、ラストシーンでは号泣者も続出しそう……。

文/大森さわこ