ボランティアがよそう料理を子どもたちが自分で取りにいく
ボランティアがよそう料理を子どもたちが自分で取りにいく
すべての写真を見る

 さらに、三宅さんは『子ども食堂』の地域を交えた活動についても提案する。

「子ども限定の支援ではなく、高齢者、障がい者など必要とする人が足を運べるよう受け皿を大きくすることもひとつ。自然と人が寄ってきて日常生活の一部に『子ども食堂』という空間があることはとてもいい」

母親たちの駆け込み寺の一面も

 前出・長場さんが実感していることはご飯が温かいメッセージになっていることだ。

「家事や育児に疲れたお母さんがホッとできる場所にもなっています。病気のときや共働きの人にも利用してもらいたい。子ども食堂がある日は安心して残業できる、という声を聞いたこともあります」

 今回、取材した『子ども食堂』に1歳児と小学1年生の子どもと初めて訪れたという30歳の主婦がいた。

「家事も育児も毎日がバタバタ。誰かが作ってくれたご飯を食べられることってすごく幸せです。ここに来て心が落ち着きました」

 母親たちの駆け込み寺のような一面も担っているようだ。

「子どもたちだけでなく、誰でも来られる場所です。私たちの活動は月に2回。10人弱の子どもが来ます。当初は小学校の校長先生にチラシを持って行っても軽くあしらわれ、保護者からは“何でただで食べられる?”と怪訝な顔をされたこともありました」

 と、長場さんは振り返る。

子ども食堂には、ご飯を食べられない子が来るとの印象があるかもしれませんが、子どもたちの事情は私たちもわかりません。家庭の事情を詮索することはせず“家庭の食卓”という位置づけです」

 大きな家族のように、みんなで一緒に食卓を囲む。

 加藤名誉教授は、

「経済面だけでなく精神的貧困をともに解決する場が『子ども食堂』だと思います。『子ども食堂』は貧困対策のほんの一部。食を支援することで子どもも親も食べ物の心配がなくなります。すると次に何をしようか考えられる。誰かと会話しながら食べることで心にいい影響があります」

 子どもたちをいちばんよく知る学校との連携や次のような機能強化を提案する。

「誰でも食事ができる仕組みと、もう一歩進んで虐待、ネグレクトを受けている子どもには個別での支援や児童相談所など行政につなげるなど2段構えも必要。社会全体で子どもを支える仕組みづくりが遅い国に『子ども食堂』だけでは不十分な部分を伝え、要望していくことも重要です」

 子どもへの支援だけでなく地域の窓口として期待されるのが、今後の『子ども食堂』の姿かもしれない。