市民の集いで「NO!」の声を上げる参加者。“鉄格子”越しにスピーチを聞く女性も
市民の集いで「NO!」の声を上げる参加者。“鉄格子”越しにスピーチを聞く女性も
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 例えばママ友がLINEグループで「いじめを見て見ぬふりのあの先生を殴ってやろうか」と投稿し、ウサギがパンチするスタンプで共感の気持ちを示したことが「共謀」とみなされるかもしれない。

 弁護士でもある社民党・福島瑞穂参院議員は、

「まだ、誰も被害に遭っていない。何も起きていない。共謀の段階でどうやってその犯罪を暴くんですか。監視や尾行、盗聴をするのではないか。共謀罪は組織的威力業務妨害罪、建造物損壊罪なども対象だ。座り込みをしようかという市民運動を弾圧する目的があるのではないか」

 などと懸念を述べた。

戦時中の隣組みたい

 米軍普天間飛行場の辺野古移設反対運動が続く沖縄では、現実味のある恐怖といえる。

 沖縄の風・糸数慶子参院議員は5月30日の参院法務委で安倍首相に率直な疑念をぶつけ、集会で報告した。

「政府が沖縄県民の意思を無視して基地建設を強行するとき、その意思表示の最後の手段である抗議行動、座り込み、ブロックを積む行為が共謀罪の対象になるのか安倍首相に伺ったところ、明確に“対象にならない”と答えました。ウソですよね」(糸数氏)

 会場から笑い声が起こった。

 非政府組織『グリーンピース・ジャパン』の米田祐子事務局長は「金田法相は、環境・人権保護を標榜する団体であっても犯罪実行を目的とすると判断された場合には共謀罪の処罰の対象になると発言しました。市民活動は萎縮してしまう」と発言。

 新聞労働者の約8割を組織する『新聞労連』の小林基秀委員長は「3年間、エジプトで特派員をしていました。独裁国家というのは見かけの治安はいいんです。体制批判をした人はすぐ取り締まれるからです。だから、見ざる、聞かざる、言わざるになる。日本をそんな社会にしたいですか」と会場に問いかけた。

 参加者に話を聞いた。

 消費者団体の機関誌を編集する杉浦陽子さん(48)は鉄格子を模した小道具を持参し、「みんな恐怖心を感じないのかな。萎縮するのは嫌ですよね」と話す。

 千葉県の女性教職員(60)は「市民同士で監視し合うなんて戦時中の隣組みたい」と不快感をあらわにした。

 約1時間強の集会終了後、参加者は銀座を通って東京駅付近までデモ行進し、「LINE監視の共謀罪はいらない!」などと声を上げた。