道子さんが妊娠中の食事を記録したノートには、夫に対する不安な気持ちが書かれていた
道子さんが妊娠中の食事を記録したノートには、夫に対する不安な気持ちが書かれていた
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 それから約1年間、道子さんは、実家で過ごした。精神状態も落ち着きを取り戻したが、夫が訪ねてくると、また不安定になったという。

 だが、いずれ夫との生活に戻るため、道子さんは心療内科へ通い、治療を始めた。

 そのさなか、あるトラブルが発覚する。

「娘が100万円近くも買い物をしたようなんです。明細を見て驚いた夫が、怒鳴り込んできました。娘を罵倒し、さらには“こんなバカ娘に育てたバカ親!”と私にも暴言を吐きました」(恵子さん)

 道子さんの購買行動を、前出の青木教授はこう見る。

「買い物をすることで、旦那さんの支配によるストレスを発散していたのでは。DVの被害により、アルコールやギャンブルに依存する人は多い」

「子どもを置いて出てけ」

 恵子さんが弁済することで、なんとかおさめたという。

 その後、道子さんは社宅に戻り、恵子さんも娘夫婦と同居することに。だが、そこで目の当たりにしたのは、夫の容赦ない言葉の暴力だった。

「病気になったのは俺のせいだと会社のやつに悪口を言われた」、夫婦ゲンカを恵子さんが仲裁しようとすると「お前に言われる筋合いはない」と、義母をお前呼ばわり。恵子さんが用事で実家に帰ると、「病人と赤ん坊を俺に押しつけるな」と言われたことも。

 病気でもキチンと家事育児をする道子さんに「お前はバカだ」「お前は何もしない」と夫の罵倒は加速していった。

 症状が好転しない道子さんが、再び100万円近いショッピングをしたのは、大手企業に勤める夫が、社内で選抜された海外研修が決まった直後だった。恵子さんが明かす。

「彼が海外から帰ってきたときに、病気を治して迎え入れたい。そのためにはちゃんと話さないと病気と向き合えない気がすると語っていました」

 少しでもいい方向に進むため、道子さんは自ら買い物のことを告白したが、夫は「子どもを置いて出ていけ」と追い出した。

 '08年11月23日。その日から、道子さんは愛娘と引き離されてしまった。実家へと帰る道すがら、「お母さんやっぱり戻ろうよ」「○○ちゃん(娘)を連れてこようよ」と何度も何度も訴えたという。

 わが子に会えず、ふさぐ娘のために恵子さんは弁護士を立てた。交渉の末、月1回、夫の実家で子どもに会えることに。

「“初めてママってしゃべった”“プレゼントしたアンパンマンのトレーナーを着てくれて、『ママ、また来てくれる?』ってチューしてくれた”と会うたびに孫の様子をうれしそうに話していました」