あの世ライフの充実には今が大切!

 本書に登場する12人は、クンダリーニの光で人の寿命を言い当てる気功師、過去生や中間生を自由に行き来するセドナのヒーラー、生まれ変わり現象や過去生記憶を学術研究する大学教授……などなど、精神世界ではかなりの大御所も多数。

「それぞれ話がいい感じで現実離れしているので、楽しかったですね。臨死体験した方々は、何かふっきれているのか、みなさん実年齢よりもお若いんですよ。細胞が死で1度リセットされたのではないかと思うほど。人間的にも深みがあって波動が高いというか、内側からヒーリングパワーみたいなものがにじみ出ていて。臨死体験後の人生は人の役に立つために生きるという使命がある、そんな崇高な考えをお持ちの方々ばかりでした」と辛酸さん。 

 特に印象的だった人は?

地獄に住んでいた弁護士さん! あの世に行ったという話は聞いたことがありましたが、地獄に住んでいた人は初めて。どのくらいいたのか聞くと、地獄には時間の概念がないと。そのあたりもリアリティーがありましたね」(寺井さん)

「三途の川のそばに土産物屋がある、という話は衝撃的でした。それは誰にあげるの? 先に亡くなった親戚へのお土産? といろんな考えが頭をかけ巡りました。また、5度の臨死体験で神様に“また来たの”とあきれられたニューヨークの自然療法医の方が、あの世ではイメージしたものをすぐ作れてしまうので、クリエイティブな能力が必要という話。今からでも迎賓館を見学したり、一流の工芸品の天井を見たりして、記憶にとどめておかねば、と思いましたね。死んでからも無印の家具しか思い浮かばない、というのは悲しいですし……」(辛酸さん)

 こんな荒唐無稽(こうとうむけい)ともとられかねない話がたくさん出てくる本書だが、登場する12人に共通する点があるのは興味深いところ。

今の瞬間を大事に自分らしくあれ。これは共通していましたね。私自身、胸に響いて、取材後は、“丁寧に生きる”が口癖になったほどです」(寺井さん)

生きている時よりも死んだ後のほうが意識が拡大し、視野も広がり、冷静沈着で、冴(さ)えわたっているという話も惹きつけられました。取材を進めるうちに、本当は現世が夢で、あの世がリアルな世界なのではないかという思いが芽生えてきたほどです。現世では自分に自信が持てなかったり欲求不満だったりしても、あの世では輝ける本当の自分がいるのかもしれないと。そう考えれば、現世でつらいことがあっても少しは上手に対処できるのではないかと思えるようになりました。

 ただ、そうなると、あの世のほうがいいじゃないかと感じることもあったのですが、話を聞き進めていくと、今を大切に生きたほうが、断然いいあの世ライフを送れると。これはこの世はもういいかなとあきらめそうになる考えを払拭(ふっしょく)してくれるものでしたね」(辛酸さん)

 本書は、死後の世界への探求心をくすぐるとともに死への恐怖を大いに軽減させてくれる。そしてまさに“あの世”から本書を通じて「死後の世界を考えることは、今の自分を大切に生きること」、そんなポジティブなメッセージが送られているような気がした。

取材・文/アリス美々絵

<著者プロフィール>
しんさん・なめこ◎漫画家、コラムニスト。1974年生まれ。アイドル観察からスピリチュアルまで、あらゆる事象を取材し、著書も多数。近著に『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)。

てらい・ひろき◎怪談蒐集家、涙活プロデューサー。1980年生まれ。心のデトックスを図る「涙活」を発案。笑顔のお別れ会「笑顔葬」もスタート。『泣いてやせる! 涙活ダイエット』(マキノ出版)など著書多数。