人材が育たなくなるのです。

 教える必要などない、欧米ではそういうやり方をしているという声が聞こえてきそうですが、ここは日本です。業種にもよりますが欧米の多くの大企業では職場で人材を育成するという発想がほとんどない。言い換えれば、最初から「出来上がった人材」「完成品」を採用する経営なのです。日本とは違います。

 とはいえ、確かに困ったときに「相談」ばかりということになれば、いわゆる「指示待ち人間ばかり」になる可能性がなきにしもあらずです。自分で究極まで考えずにちょっと困ると上司に「相談」ということでは、逆に「人材育成」にはなりません。やはり「自分で考えて実行する人間」に育てなければなりません。

「かくれんぼう」のほうが良いかもしれない

 そういう観点から考えてみると、「ほうれんそう」の「相談」というところは、再考する必要があるかもしれません。「ここまではやりましたが、次がわかりません。どうしたらいいのでしょうか」などと「相談」するようでは「指示待ち人間」になりかねない。「相談」より「確認」するということのほうが「自主的人間」を育てることにつながるのではないかと思います。

 「ここで行き詰まりましたが、これを打開するためにこういう方法を考えました。この方向で取り組んでいいですか」、あるいは「こういうやり方にすると結果はもっとよくなると思います。このやり方を採り入れていいですか」などと「確認」し、それに対して上司がオーケーサインを出す。

 そうすることによって、人材は育っていくのではないでしょうか。つまり、「ほうれんそう」よりも「かくれんぼう(確認、連絡、報告)」という考え方のほうが好ましいといえるかもしれません。

 むろん、「ほうれんそうもかくれんぼうも必要ない」ということであれば、それもよし。「ほうれんそう」のほうが、ウチの会社には合うのだというのならそれもよし。「確認ということに重点をおいて、かくれんぼうでいこう」と考えるもよし。

 自分の会社の人材育成は、どのやり方が適しているのか。それぞれに考えてみることが大事だということです。


江口 克彦(えぐちかつひこ)◎故・松下幸之助側近 1940(昭和15)年2月1日、名古屋生まれ。参議院議員。愛知県立瑞陵高等学校を経て、 慶應義塾大学法学部政治学科卒。松下電器産業株式会社入社後、1967年・PHP総合研究所へ異動。秘書室長、取締役、常務取締役を経て、1972年・同研究所専務取締役。1994年・同研究所副社長、2004年・同研究所社長に就任。2009年・退任。その後、執筆・講演を中心に活動していたが、「みんなの党」の渡辺喜美代表からの要請に応え、「地域主権型道州制」の政策を掲げ、2010年7月の参議院議員選挙に出馬、当選。松下幸之助のもとで23年間、側近として過ごす。松下幸之助に関する多数の著作がある。松下幸之助哲学の継承者、伝承者と評されている。それゆえ、松下幸之助経営に関する講演依頼も多い。また、松下幸之助の主張した「廃県置州論」を発展させ、「地域主権型道州制」を提唱、国会では、超党派の『道州制懇話会』の共同代表を務める。各地で「地域主権型道州制」の講演、啓蒙を行なっている。【公式サイト】http://www.eguchioffice.com/