1度騙された人は何度も被害に

 騙されると、人は心に傷を負う。次のようなプロセスをたどると西田教授。

「まず感じるのは無力感。なぜ私が……と、がっかりしてエネルギーを消耗します。次に羞恥心。騙されないと豪語していた人ほど、恥ずかしさに身を縮めます。3番目が、現実逃避。もう忘れたいと思う。最後に、楽観視。1度やられたのだから、もうないだろうと思いたいんですね」

 だが実は1度騙された人ほど、何度も狙われてしまう傾向にある。

「騙せる可能性があるということで、相手はより積極的に騙しにかかってきます。悪質な業者同士で“騙されやすい人リスト”を交換していたりもするので、いろいろな詐欺師から連絡が来るようになることもある。電話で騙されたのなら電話番号、メールでならアドレスは変えることです。みなさん、なかなか実行しようとしませんが、楽観視が次の被害につながります

 騙されないためにどう対策すればいいのか? 西田教授は次のように提案する。

「私は、見知らぬ人、知っている人を問わず、お金の話が出たら“さしすせそ”を思い出せと言っています」

【さ】さっと頭を切り替えろ。
【し】相手が何者かしっかり調べろ。
【す】相手の口上の罠をすっかり見抜け。
【せ】焦らされたり不安にさせられたりしても精いっぱい我慢しろ。
【そ】行動を起こす前に誰かに相談しろ。

「相談は、家族や身近な人はもちろん、公の相談窓口でもOK。詐欺師の示す番号にかけてしまわないよう、電話の目の前にかけるべき番号や信用できる連絡先を貼っておくのもいいですね」

 騙されてしまったかも? と思った場合は、『消費者ホットライン』に相談するのも手だ。

「『188(イヤヤ)』に電話をかければ、自分の住む市区町村の消費生活相談窓口を案内してもらえ、架空請求や悪徳商法による被害などを相談できます」

 あの手この手で騙しにかかる詐欺師に対抗するには、こちらも手を尽くして防衛するしかない。ここまでに紹介した対策も含め、虎の巻としてまとめた下の表を家族でチェックして!

【悪徳詐欺を完全ブロック!虎の巻】
1 お金の話が出たら「さしすせそ」
2 知らない電話にはまず出ない!
3 相手の指示した番号にむやみにかけない
4 留守電機能、防犯電話を活用せよ
5 パスワードは複雑に。使い回しは×
6 困ったときは「188」にダイヤル

<教えてくれたひと>
西田公昭さん◎立正大学心理学部教授。専門は社会心理学で詐欺・悪徳商法研究の第一人者として各メディアで活躍。著書に『だましの手口』(PHP研究所)など