『ボンジュール、アン』●監督:エレノア・コッポラ/出演:ダイアン・レイン、アルノー・ヴィアール、アレック・ボールドウィンほか/上映時間:1時間32分/アメリカ/配給:東北新社 2017年7月7日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほかで全国公開 STAR CHANNEL MOVIES the photographer Eric Caro

 人生に行き詰まったとき、疲れたときは旅をするのがいちばん。新しい光景や人との出会いが、心をリフレッシュさせてくれる。そんな思い出をもっていること自体、幸せですよね?

 『ゴッドファーザー』で有名なフランシス・フォード・コッポラ監督の妻、エレノアもまた、とびきり素敵な旅の思い出をもっていた。カンヌ映画祭の帰り、南仏を巡ってパリまで遠回りした、思いがけない旅路。その記憶をもとに作られたのが、この映画だ。

 主人公アンは、いわゆる良妻賢母。娘は親離れの時期だが、映画人の夫に尽くすさまはまるで日本人のよう。そんな彼女が、夫の仕事上のパートナーであるフランス男とカンヌからパリまでドライブすることに。7時間の道程は、人生を楽しむ達人の「パリは待ってくれるよ」(これが原題)という享楽主義のおかげで2泊の寄り道トリップとなる。

 おいしい料理にワイン、素晴らしい景色、興味深い博物館、そして自分を尊重してくれる人とのウイットに富んだ会話。ああ、こんな旅がしてみたいと思わずにはいられない。案内人はイケメンではないが口のうまいモテ男で、信用ならないと思わせるところもある。でもトキメキの寄り道が、人生を変える。旅することでさまざまな発見、感動を経験するアンに、共感スイッチは入りっぱなし!

 この映画は80歳のエレノアにとって、初めて監督する劇映画。「何歳だろうが新しい自分になれる」ということを監督自らが証明した作品でもあるのだ。

 もうひとつ、この映画が楽しいのは、アンがデジカメ好きという設定。旅のスナップを撮りまくる彼女を見習いたくなること必至。 さあ、この映画を見たあとはカメラをもって旅に出よう! 新しい自分を見つけるために。

文/若林ゆり
「ふた昔前、カンヌ映画祭に6回参加。なかでもマルセイユからカンヌ、プロヴァンス、モナコまで、タクシーのおじさんにほぼタダで(!)案内してもらった思い出は宝物。言葉の壁は低いってことを身をもって知ったなぁ。これもいつか作品にしたいが、その前に新しい旅をしなきゃ!」