(写真左から)篠原涼子、榮倉奈々、上戸彩、菅野美穂、松たか子、小雪

 昨年人気を博したドラマ『99・9』の新作(来年1月スタート)で、出産した榮倉奈々に代わって木村文乃がキャスティングされた。アルコールのCMでは小雪の妊娠により菅野美穂へ、そして菅野の妊娠で井川遥へバトンタッチ。妊娠・出産がもたらす、女優業への影響とは──。

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《この度、2700gの元気な赤ちゃんを出産いたしました。今回の妊娠、出産ではたくさんの方々にご協力、ご指導いただき、日々助けられて生きていることを、また、温かく見守ってくれる方々に恵まれている事を実感いたしました》

 6月12日に元気な赤ちゃんを出産したのは、結婚から約1年がたった女優の榮倉奈々。母子ともに健康だそう。

「今年の1月から放送されていた『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)に出演していましたが、3月14日に妊娠を発表して以来、仕事をセーブし、いわゆる“産休”に入っていました」(スポーツ紙記者)

 榮倉といえば、昨年出演したドラマ『99・9-刑事専門弁護士-』(TBS系)での好演も記憶に新しいが、来年の1月から続編が決定している。

「このドラマは同年で平均視聴率が2位のヒット作。松本潤さんと香川照之さんの絶妙な掛け合いを榮倉さんが丸くおさめるというやりとりが魅力でしたが、続編では、榮倉さんに代わって、木村文乃さんがキャスティングされています」(テレビ誌ライター)

 生まれて半年ほどの子どもを置いて3か月間、早朝から深夜までの撮影はさすがに厳しいという判断だったのだろうか。キャスティングの変更について、芸能レポーターの川内天子さんはこう分析する。

「痛手、というより困るでしょうね。ある女優さんのことを思ってシナリオやお芝居が作られているのにポッと代わってしまったら。新ヒロインを立てて成功した前例もありますが、前作から築いてきたものを作り直さなくてはならないので、大変だと思います」

 過去には、妊娠発覚によって『HERO』(フジ系)で松たか子に代わって北川景子が、『クロコーチ』(TBS系)では、香椎由宇に代わって芦名星が新キャストを務めている。

妊娠中のご法度はアルコールのCM

 産休とは、妊娠・出産・育児のために休暇を取ること。一般的にはおめでたいものとしてとらえられるが、女優たちはそうもいかない。

「同年代もそうですが、新進気鋭の若手女優がどんどん出てきます。もし自分が産休に入ってしまえば、それまで入っていた自分の仕事がほかの女優に取られてしまいかねない。代わりがいるという意味で、役の取り合いは壮絶なのです」(前出・芸能プロ関係者)

 産休への入り方も、なかなか難しいようで、

「妊娠自体が女優さんのイメージダウンになることはあまりありません。ただ、その妊娠がドラマ撮影中やCM契約中、映画撮影中、舞台公演期間中などの仕事に影響が出る場合は、本人だけでなく、事務所やCMクライアントが非常に困ったことになってしまうんです」(川内さん)

 妊娠中は胎児に影響を与えてしまうおそれがあるため、過激なアクションシーンなどは、もちろん撮影できない。特にCM契約は女優にとってネックである。

「お酒のCM出演は、妊婦さんはご法度。妊娠中にお酒を飲むと胎児性アルコール症候群になりかねないため、その商品をPRしているというのは、さすがにイメージがよくないですからね。契約期間中は妊娠をしないというのが暗黙の了解でもあり、契約書に記載されていることもあります。期間中に妊娠してしまったら、周囲が“なに考えてんだよ!”と怒ってもしかたありません」(川内さん)

 サントリーのウイスキー『角瓶』のCMは、’07年秋から小雪が、’11年から菅野美穂が、’14年から井川遥へと受け継がれているが、

「小雪さんは妊娠を発表後に降板、菅野さんも降板後に妊娠を発表しています。上戸彩さんもお酒のCM契約が切れるまでは、“妊娠してはいけない”と言われていたそうですよ」(前出・芸能プロ関係者)

 女優は、妊娠する時期も選ばなくてはならないのだ。大変なようにも思えるが、それもそのはず。女優ひとりが稼ぐ金額が事務所に大きな影響を与えることもある。

「とある女優さんが産休に入った際に、マネージャーがクビになった例もありました。産休に入ってしまったことで、彼女が稼ぐ算段を立てていた分の金額が入ってこなくなってしまったから。それだけ女優さんの休業というのは、周りにも影響があるんです」(前出・芸能プロ関係者)

出産によって仕事を失うこともある

 出産してから復帰するまでの期間は、人によってまちまち。篠原涼子は第1子出産から復帰まで約1年半、松たか子は約3か月で復帰しているが、その長さは千差万別だ。

【主な女優の出産から復帰までの期間】
・太田莉菜(29)  約8か月
・篠原涼子(43)  約7か月(第2子)
・黒木メイサ(29) 約7か月
・伊東美咲(40)  約4年2か月(第1子)
・菅野美穂(39)  約4か月
・上戸彩(31)   約4か月
・杏(31)     約4か月
・松たか子(40)  約3か月
・広末涼子(36)  約1年5か月(第1子)
・土屋アンナ(33) 19日(第3子)

「生まれた子どもが可愛くて長く1年取る人がいたり、体形を気にしてなかなか戻れない人もいたりします。逆に早く戻る人は、体形が出産前に戻せている人。例えば、出産後2週間で仕事に復帰している人は、出産前から仕事の予定を把握し、出産前の妊娠中から体形維持を行って“出産してすぐだけど、この体形”という宣伝材料に使おうと考えていた人なのでは、と私は思います」(川内さん)

 産前産後の体形維持や体形戻しは、主婦にとって興味のあること。復帰が早すぎるからといって、それが批判の対象になるわけではない。

「子育ての話もリアルタイムにできるので話題性もあり、宣伝材料になる、という考えも大いにある。それも計算のうえで復帰時期を決めることもあります」(川内さん)

『99・9』の榮倉と木村、『角瓶』のCMでの小雪、菅野、井川のキャスティングも、妊娠・出産がなければ仕事を続投できたかもしれない。

「芸能界は限りなく自営業に近いので、出産のタイミングやイメージの定着に失敗してしまうと、仕事を失うこともあります。その逆に、ベビー用品など子どもに関するグッズのCMや、家庭をイメージさせる役柄にキャスティングされることもあります」(川内さん)

 ただ、私生活で母になることによって、時間の制約も出てくる。

「ドラマやバラエティーなどでは、泊まりを伴う撮影はダメだったり、遠方まで撮影で出向くことができなかったりと、拘束時間などの制限も出産を機に出てきてしまうことがあります」(川内さん)

 子どもを産んで間もなくは、気をつけている夫婦も多く、

「松嶋菜々子さんと反町隆史さん夫妻は、それぞれにドラマのオファーなどが入っても、必ず片方は家にいるようにスケジュール調整をしていたそうです。小さいお子さんの面倒を見るためだったそうですよ」(前出・芸能プロ関係者)

 出産を機に“母”のイメージがつくことはむしろステキなことだが、「タイミング次第の面はありますね」と、川内さん。ママであり女優。そんな彼女たちから、これからも目が離せない!