安田顕 撮影/高梨俊浩

「モテたいというよりも、僕はチヤホヤされたいタイプかな(笑)。でも、そういった思いはこの世界では大事だと思うんです」

 ハマり役と呼び声高い舞台『スマートモテリーマン講座』で約5年ぶりに座長を務めるのは、今や映画やドラマに欠かせない存在となった安田顕

「この舞台をやるたびにモテについての質問をされるのですが、それに対していまだに確固たる準備ができていない(笑)。モテたくないって人間はいないと思うのですが、そのための努力をしているかと聞かれたら、僕も含めてほとんどの人が怠っていると思うんですよね。モテる人は自分に対するエゴと相手を気持ちよくさせる気配りが両立できていますから」

 とはいえ、学生時代にはこんな勘違いをしていたことも……。

「学生時代ロックも好きだったので、髪の毛を伸ばしていたんです。それで白のスウェット上下を着て、ジョン・レノンみたいなメガネをかけて歩いていたら、すれ違う女子がみんな振り返るのに、全然目を合わせてくれなくて。“女子から相当意識されているな”と思っていたら、どうやら裏で宅八郎(’90年代に活躍したオタク評論家)って呼ばれていたみたいで……。ただの僕の勘違いでした(笑)

 演出を務めるのは、公開中の映画『銀魂』など数多くの作品で安田とタッグを組み、名コンビとして知られる福田雄一。

「福田さんはキャストをのせるのがお上手なんですよね。キャラクターに対して愛情を持って接してくれていることはできあがりを見ても感じるし、コンプレックスを笑いに変える演出力にはいつも感服しております」

 自称モテる“モテリーマン”がモテるサラリーマンになるためのレクチャーを講座形式でお届けする舞台。

「斜め上いくアドバイスばかりなので、実践ではまったく参考にならないかと(笑)。本当に笑える内容なので、この舞台で笑い納めをしてくれたら」

 北海道で結成された演劇ユニット・TEAM NACSのメンバーでもある安田は、舞台が原点だと語る。

「映像の仕事も楽しいですけど、やっぱり舞台が原点なので、アドレナリンの出方が違います。目の前でお金を払って見た方が拍手をしてくださるのは本当に幸せですし、ありがたい仕事だなって思います」

 TEAM NACSのメンバーもそれぞれ活躍中。

「メンバーの活躍は刺激になりますね。出演作品はチェックしていないですけど(笑)。僕の場合はプライベートでもメンバーとはあまり会わないんです。無理しない形を模索することが、続けていくコツだと思うので」

 無理をしないスタイルは、プライベートでも同じなようで……。

「暇があれば寝ていますね。昨日も寝すぎて奥さんに寝すぎよって怒られたぐらい(笑)。趣味もないですし、仕事をしているときがいちばん楽しいんです。だからマネージャーにも“お仕事をいただけるなら、どんどん入れてください”とお願いしています。仕事と仕事の間に休みがあると切り替えができないので、それは自分にとっても健全ではないというか。次の仕事が入れば、嫌でも切り替えられますから」

 日曜劇場『下町ロケット』や『小さな巨人』など人気作品に多数出演している安田。注目を集めるキッカケとなったのは、北海道のローカル番組ながらDVDなどが大ヒット、今なお語り継がれる伝説の旅バラエティー『水曜どうでしょう』でマスコットキャラクターの“中の人”として準レギュラー出演したこと。

「もし僕がいま死んだとしたら、報じられるときには『水曜どうでしょう』の名前が先に出ると思うんです。

 あの番組のおかげで今があるとは思いますが、現役の俳優としては、常に今やっている作品が自分の代表作になるようにという思いで演じています。胸を張ってこれが代表作と言える作品を作ることが俳優としての目標であり、課題ですね」

■安田さんから見てモテる人は?

「TEAM NACSだったら音尾琢真。ああ見えて、独特のフェロモンが出ているんですよ。素敵だなって思うのは、山崎努さん。個人的には俳優は作品の中で魅力的であることがすべてだと思うので、山崎さんの私生活は知りたくないですね」

<出演作品紹介>
舞台『スマートモテリーマン講座』
出演/安田顕、戸塚純貴、若月佑美(乃木坂46)、水田航生、シソンヌ
11月2日東京・かめありリリオホールを皮切りに、12月15~30日、東京・天王洲 銀河劇場まで全国12か所で公演。チケットの一般発売は9月4日~。全席指定7800円ほか

『スマートモテリーマン講座』