知らない人には謎だけど、地元民にはタマラナイ。そんな“ご当地グルメ”のなかから、いまや全国区の一品、そして町おこしにも一役買っているニューフェイスも光る、“ときめきのお肉編”をお届けします。

現地では“夜の料理”!? どちらかというと酒のつまみ

■チキン南蛮(宮崎県延岡地方)

 揚げた鶏ムネ肉に甘酸っぱい南蛮酢をかけた従業員のまかない料理がチキン南蛮の原型。全国的にはタルタルソースをかけたものが一般的だが、延岡では原型を受け継ぐ店もある。

チキン南蛮(宮崎県)

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 衣をつけ、揚げた鶏肉を甘酢タレにからめ、タルタルソースをかけたチキン南蛮。全国的にも認知度が高いご当地食だ。もともとは延岡市内の洋食店『ロンドン』のまかない料理。

「当時は甘酢ダレのみだった」と語るのは、市民による町おこしグループ『延岡発祥チキン南蛮党』幹事長の脇坂さん。

 延岡ではタルタルソースをかけたものと、甘酢ダレだけで味わうシンプルなものの2つがある。

 甘酢ダレ系は昭和39年創業の『直ちゃん』の先代・後藤直氏が、タルタルソース系は昭和40年に『おぐら』の創始者・甲斐義光氏が販売したのが発祥。延岡ではご飯のおかずだけでなく酒のつまみとしても人気があり、たいていの居酒屋のメニューに載る。また、7月8日をチキン南蛮の日とし、この日に近い平日に市内の小中学校の給食にも提供されているという。

 使う部位は、あっさり食べやすいムネ肉、ジューシーで噛みごたえのあるモモ肉など、お店や家庭によって分かれるそう。

「最近では、黒酢や鶏の首の肉・せせりを使うなど、新しいチキン南蛮も登場しています。各家庭でもタルタルソースに生クリーム、甘酢に玉ねぎやにんじんのスライスを入れるなど、それぞれわが家の味があるようですね」(脇坂さん)

 お店でも家庭でも、老若男女に愛されるチキン南蛮は、まさに延岡のソウルフードだ。

個性豊かなラインアップが楽しい! ご当地グルメのニューフェイス

■砂川ポークチャップ(北海道 砂川地方)

 見た目からも想像できるがアメリカ発の料理で、ポークチャップとは骨つきの豚ロース肉のこと。豚肉をソテーしたり網焼きにした後、特製のケチャップをかければできあがり。

ポークチャップ(北海道)

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 砂川ポークチャップは青年会議所が中心となって作り上げたご当地グルメ。『砂川ポークチャップ協議会』多比良さんによると、

「特産のトマトと玉ねぎを生かした料理ができないかと考えていたところ、砂川に養豚農場が完成。砂川育ちの豚が手に入るようになった。トマト、玉ねぎ、豚肉といえば、ポークチャップしかない! と。ほかにポークチャップで町おこしをしている地域がなかったことも幸いでした」

 まずは青年会議所のメンバーで市内の飲食店にポークチャップをメニューに加えてもらえないかと頼んで回った。砂川ポークチャップの定義は、砂川産食材を1つ以上使用していること、ポークチャップであること。かなりゆるい。

「縛りをきつくしては、協力は得られない。ハードルを下げることで各店独自の創作ポークチャップを作ってもらえば、という狙いもありました」(多比良さん)

 狙いは的中。協議会の加盟店は現在19店舗だが、洋食店のみならず中華料理店からカフェまでお店のジャンルもさまざま、想像を超えた個性豊かなポークチャップが誕生した。現在も協議会が中心となり、公認のポークチャップソースの販売、大手ハム会社とのタイアップ商品を手がけるなど、ご当地グルメとして着実な成果を上げている。

その他のご当地肉料理

四日市トンテキ(三重県)

■四日市トンテキ(三重県)

「大きな肉が大好きな僕のオススメ。ガッツリ系ならこれ! 分厚い豚肉をニンニクと濃いめのタレでソテーし、たっぷりのキャベツのせん切りを添えた料理。戦後まもなく四日市市内で提供されていた。白飯との相性抜群&ボリューム満点で腹も満足」(トラベルライターのカベルナリア吉田さん)

■久留米焼き鳥(福岡県)

「串に刺してしまえば何でも焼き鳥! という久留米人。ネタの種類が鶏や牛、豚、馬、魚介類、野菜など数多く創作巻き物串も豊富なのが特徴。アスパラガスの肉巻きを日本で初めて手がけた巻き物串誕生の店『鉄砲』も久留米のお店」(ご当地グルメ研究会の松本学さん)

■からし焼き(東京都)

「東十条駅すぐの店『とん八』が発祥で、東京オリンピックの次の年から始めたメニュー。炒めた豚肉を真っ赤なタレで煮込んだ豆腐と合わせたもの。たっぷりのショウガ、ニンニク、ねぎも入って、行きすぎなまでのアッパー燃焼系フードだ」(ソウルフードに造詣の深い怪談研究家の吉田悠軌さん)