福原弘太郎容疑者(フランス国立社会科学高等研究院日仏財団HPより)

「どうしてこんな低俗な事件を起こしたのか。同じ研究者として研究分野を裏切るような行動に憤りを感じます」と現役東大院生の男性は語る。

 東京・荒川区の路上で背後から女子高生の頭に布製トートバッグをかぶせて抱きついたとして警視庁荒川署が強制わいせつ未遂の疑いで9日に逮捕したのは文京区在住の福原弘太郎容疑者(34)。東京大学大学院の博士課程に在籍する“農業エリート”だ。

 警視庁によると、事件は6月1日午後9時15分ごろ発生した。帰宅途中だった女子高生が悲鳴を上げるなどして抵抗したため、強制わいせつの目的を遂げずに現場から逃走したという。

「しかし、犯行に使った自転車からアシがついた。逮捕の決め手は現場近くの防犯カメラ映像。捜査当局は映っていた自転車とその所有者を割り出し、8月2日に事件現場とは自宅を挟んで逆方向の豊島区で別の女子高生のあとをつけている福原容疑者を確認し、集合住宅の敷地内に入ったところで住居侵入の疑いで現行犯逮捕した」(全国紙記者)

 福原容疑者は取り調べに、「抱きついてはいない」

 と容疑を一部否認しつつも、

「堅苦しい研究と逆のことをすると、気分が安らいだ。スリルや背徳感を求めていた」

 などと供述している。

 容疑者宅は東大キャンパスから徒歩約2分。近隣住民によると、玄関が別々にある一戸建て住宅のワンフロアを今年5月から借りているという。

「独身のようで本人が菓子折りを持って引っ越しの挨拶に来ました。ごく普通の人ですよ。静かに暮らし、玄関前にスポーツタイプの黒っぽい自転車を駐輪していました」

 と近所の男性は話す。

 同容疑者は福岡県出身。東大教養学部でアジア地域文化研究を選択し、卒業後に理科系の東大大学院農学生命科学研究科に転じた“変わり種”といえる。'08年に修士課程を修了。同年4月、都内の財閥系大手シンクタンクに就職し、食や農業にかかわる調査・研究職に従事した。

 約3年後、東大農学国際同窓会の卒業だよりに当時の仕事の近況報告を寄せている。

《各調査を遂行する際、不思議とその分野に馴染みがあるがごとくスムーズにこなせることが多々あります(こなせないこともありますが…)。私は農学部出身ではなく農学国際専攻に2年間在籍したのみで、さほど講義などで素養が身についているとも思えず、またかつての研究内容とも重なる部分は少ないので、何故?と疑問に思っておりました》(2011年3月発行『農国同窓だより』から)

 と能力自慢。大学院在学中、専門分野の異なる同級生らと議論を重ねた経験によって、

《無意識のうちに専門以外の様々な分野におけるセンス、流儀のようなものが若干ながら身に付いており、それが今になって役立っているのではないかと考えています》(同)

 と結論づけている。

福原容疑者が通っていた東大農学部キャンパス

 国内の農業分野でどれほど優秀な人物なのか。

 農業専門紙記者は、

「今年3月の日本農業史学会の個別報告ではトップバッターを務めている。中国東北部の黒竜江省の事例から『寒冷地稲作の展開過程における品種の変遷と気候資源の関係』を論じている」

 職歴は華やか。約7年間のシンクタンク在職中、官公庁の委託業務を複数こなした。例えば'12年には農水省の委託で福島原発事故の影響により縮小した輸出先国の需要回復に向けた戦略的マーケティング事業調査に参加。途上国の農業投資拡大のための検討調査や、国交省委託の未利用森林資源の収集システム調査事業も担当している。

 いつ大学院に戻って博士課程に通うようになったかはわからない。

 しかし、'09年に在ブラジルの日本商工会議所を表敬訪問して地球規模の食料安全保障について意見交換しているほか、昨年2月にはフランス国立社会科学高等研究院日仏財団の研究フェローとしてパリでセミナー講師を務めるなど世界を股にかけた活躍ぶり。事件とのギャップは大きい。

 東大に、大学としてのコメントと福原容疑者に対する処分の見込みを尋ねると、「個人情報なので答えられない。処分するかどうかも個人情報なので話せない」(広報課)と一蹴されてしまった。

 東大大学院で容疑者を知る複数の関係者は「広報に聞いてくれ」の一点張り。唯一、指導教授が重い口を開いた。

─福原容疑者をご存じですよね。

「もちろん知っています。しかし、大学の公式見解は広報に聞いてください」

─先生に聞きたいのは公式見解ではなく容疑者の素顔です。

「……。人間の素顔は100%わかるものではありません。自分自身でも素顔がわからないことがありますから。しかし、私個人としては全く予想外の事件でした。私の知る限り、事件を起こすような人物ではなかった。大変期待していたので残念です」

 事件後、面会はしておらず、現時点で面会の予定はないという。しかし、「必要があれば会いに行くかもしれない」とも語った。

 なぜ、超高学歴のエリートが粗暴な犯行に走ったのか。新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(社会心理学)は、

「性的な犯罪と、学歴・社会的地位は関係ありません」

 と前置きして話す。

「それにしても犯行態様が稚拙すぎます。街中に防犯カメラがあるのはニュースや刑事ドラマを見てもわかること。目隠しのトートバッグをかぶせておきながら、悲鳴を上げられてすぐ逃げたのも中途半端で行き当たりばったりです。知的レベルは高くても、想像力が足りない。被害に遭った少女がどれほど怖い思いをしたか。人間関係能力が低いんだと思います」(碓井教授)

 容疑者には善悪の勉強からやり直してもらいたい。