『新しい地図』で再始動したSMAP元メンバー3人。それを支えたのは「6人目のSMAP」こと育ての親のIマネージャーだった。ジャニーズ事務所時代から、ジャニー社長にさえもマネができないような愛情の注ぎ方をしてきたという彼女。多忙を縫ってSMAPのためにしてきた、凄味すら感じさせるその中身とは──。

かつての香取慎吾と木村拓哉

ファッション指令と膨大な5人の記録

SMAPのファッションを支えてきたのは、間違いなくIマネージャー。もともとセンスのいい方でしたが、ファッション誌をよく読んでいました。流行をいち早く取り入れ、自分がファン目線になって見たいファッションをメンバーにさせていたんです

 と語るのは元ジャニーズ事務所スタッフ。脱退した森且行とは違う意味で“6人目のSMAP”とも呼ばれ、グループを国民的人気にしたIマネージャーの手腕のことだ。

 そんなI氏が『株式会社CULEN』を立ち上げた。ジャニーズを辞めた元SMAP3人が所属する芸能プロダクションだ。ファンクラブ『新しい地図』のホームページを開くと、インパクト抜群の動画が流れ、次々にメッセージが浮かび上がる。

「3人のセンスが生かされているのでしょうね。香取慎吾さんはコンサート演出を手がけ、デザイン的なセンスも持っている。草なぎ剛さんもベストジーニストで殿堂入りしているし、映画好きの稲垣吾郎さんには独特の美意識が育っている」(芸能事務所関係者)

 それもIマネージャーによって磨かれたところが大きい。

 実は、彼女がジャニーズ事務所時代にSMAPの5人のためだけに作っていた、ある「秘密リスト」があるという。

 いったいどういうものかというと──。

「木村はロン毛がずっと続いてきたから、そろそろ髪切ったほうがいいんじゃない?」

「でもロン毛のイメージが強いんで、そんなに髪切れないから。じゃあ、草なぎが今度はこういう髪型にしてみようか」

「香取はいま金髪で次はこういう役だから、その前に少し爽やかなイメージにしたほうがいいわね。このへんで髪を黒くしておいて、あと、こういう雑誌に出たほうが金髪のイメージが薄まるんじゃない」

 これはIマネージャーが信頼を置く女性デスクとふたりだけで独自に行っていたSMAPのファッション戦略会議のやりとりである。

 毎日さまざまなメディアに登場するメンバーたちが、飽きられることなくもっと魅力を感じてもらえるよう、それぞれのビジュアルを微調整しながら、グループとしてのバランスもとっていたのだ。しかし、こんな制約もあった。

当時、髪型を自由にできるのは草なぎさん、香取さん、中居さんの3人だけだったんです。木村さんはずっとロン毛スタイルで定着。稲垣さんは超クセッ毛で、髪型が自由にはできない。本人も変えたくない人で」(元スタッフ)

 そんな状況で戦略を成功させるには、メンバーたちの変化を完璧に把握しておく必要がある。Iマネージャーはそのための“秘密リスト”を作っていた。SMAPがいつ、どの雑誌にどういう髪型やファッションで登場し、どんな話をしたかをすべてチェックした緻密なデータをデスクに打ち込ませていたのだ。

そのデータをもとに5人のビジュアルについての指示をひとりで出していたんです。毎日、スタイリストさんやメイクさんに細かい注文を伝えて。タレントのスケジュール管理はチーフマネージャーの仕事で、それだけでも大変なんですが。ほかに、メリーさんとの打ち合わせや会議もありましたからね」(元スタッフ)

木村と香取に施した英才教育

 チーフも含めてマネージャーたちはもっぱら現場仕事で、事務所に来ることは珍しかった。が、Iマネージャーだけは毎日、事務所に出社して、それから現場にも顔を出していた。ジャニー社長にもマネできないような、愛情の注ぎっぷり。SMAPがいかに長く、高い人気を保っていけるかだけを考えてのことだ。

 ときにはこんなシビアな決断も見せた。'96年放送の『透明人間』(日本テレビ系)で香取の人気が急上昇し、雑誌の人気ランキングで木村拓哉を抜いてしまったのだが……。

「Iマネージャーが香取の1位を許さず、木村を1位にせざるを得なかったそうです。そのときに彼女が言ったのは、“SMAPの一番人気は木村です”というひと言。あくまでSMAPは木村を不動のエースとして芸能界のトップに君臨するのであり、その座は同じメンバーであっても脅かされてはいけないというわけです」(元スタッフ)

 香取をわが子のように可愛がっていたIマネージャーだが、“SMAP愛”はその思いすら超えるものなのだろう。

 ところで、木村と香取はグループでも一、二を争うオシャレ好きだ。そこにも、Iマネージャーの影響があった。

 29日に発売された新刊『SMAPがいた。僕らがいた』には、「これからのアイドルには同性の支持も必要」「いまどきの男の子みたいな服を着たほうがいい」という考えから、Iマネージャーがふたりに英才教育を施した話が紹介されている。

「日本のボーイズファッションをリードするカリスマスタイリスト2人を連れてきて、SMAPを担当させた結果、サーファーとかのアメリカンカジュアル志向の野口強さんが木村さんと意気投合。ヨーロピアンでドレッシーなモード系を得意とする祐真朋樹さんが香取さんと仲良くなったんです」(元スタッフ)

 光GENJIあたりまでのアイドルは、キラキラ&ヒラヒラの王子様ファッションが定番。そこにいまどきのかっこよさを取り入れたことで、SMAPはビジュアル的にも新しいアイドルとして支持された。同書には、香取のこんな変化が描かれている。

《身長などの体型にも恵まれた香取は、おしゃれにどハマリして、どんどんエスカレート。『服バカ至福本』(集英社)というDVD付きの本まで出してしまった。そこには、洋服用に借りているという倉庫のなかでお気に入りの服について嬉々として説明する姿が。洋服に使ったお金は2億円ともいうから、もはや趣味とかのレベルではない。》

 世間的にはまだあまり見せていないこうした才能も、今後は大きな武器となるだろう。そう、Iマネージャーはグループを売るだけでなく、メンバーの人間力も養ってきた。事務所に残ったふたりも含め、元SMAPたちは彼女によってもたらされたものを支えにしながら、みずからの道を切り拓いていく──。

『SMAPがいた。僕らがいた』(主婦と生活社)。SMAP、TOKIO、KinKi Kids、V6、嵐など、先輩後輩たちのつながりや意外な素顔、ジャニー社長との関係もスタッフ目線から描く1冊 ※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します