『陸王』に出演中の、左から竹内涼真、役所広司、山崎賢人

「テレ朝恒例の『ドクターX』『相棒』はもはや“別枠”ですし、実質10月期のナンバーワンドラマでしょう。当初は全11話の予定でしたが、衆議院議員選挙の影響で10話に短縮されました。

 ところが、高視聴率を受けて急きょ、4話分の脚本を加筆しているそうです。今も15分、30分と放送枠を拡大していますが、今後は2時間枠を押さえるなどの対応をとり、実質全14話分の尺で放送していくそうです」(テレビ局幹部)

ヒットを生み出す、池井戸潤作品

 TBS系ドラマ日曜劇場『陸王』が快進撃を続けている。放送開始から視聴率15%前後をキープし続け、第5話は16・8%をマーク。今後は放送枠を拡大して、終盤に向けてさらなる視聴率アップを見込んでいるようだ。

 原作は『半沢直樹』や『下町ロケット』など、これまで『日曜劇場』で大ヒット作を生み出してきた池井戸潤氏。そして、15年ぶりに連ドラ主演を果たしたのが役所広司だ。

「陸上のシーンではプロテインバーを、また焼き肉弁当も差し入れしてくれました。選手として若い俳優も多く出演しているだけに、役所さんの差し入れは大好評でした」(芸能プロ関係者)

 その若手俳優の中心が、山崎賢人と竹内涼真の旬の2人。それだけに各ロケ地は大盛り上がりを見せているようだ。

『こはぜ屋』外観の撮影地になった市内の企業

 中でも、物語の中心となっている足袋業者『こはぜ屋』が社を構える埼玉県行田市は、街を挙げて『陸王』を応援している。

「最初は、ベースとなる“『こはぜ屋』の足袋作りの工場をどこか探してください”ということでした。そこから次第に市内、近隣市を回り、撮影に適した場所を、企業の協力を得ながら提供させていただきました。

 そして市長、警察署のほうも全面協力するとのことでしたので“では道路も”となったわけです」(行田市商工観光課)

『陸王』の撮影においてはずせない走るシーン。第5話、第6話に登場する『ニューイヤー駅伝』の撮影が行われたのが、ここ行田市だった。

 11月11日、12日、そして16日に行われたロケでは、市内を通る幹線、主要道路に交通規制が敷かれ、100mから200mにわたって沿道にエキストラが配置されたのだった。

総勢1万人以上のエキストラが、行田市内の道路で撮影された“駅伝”を応援した

「竹内さんと山崎さん目当てのファンがかなり多くいた印象ですね。ロケバスに乗って移動すると“キャー”って声をあげながら追っかけていましたよ。普段は乗客も少なく駅前も静かな秩父線ですが、券売機に行列ができたり記憶にないくらいの騒ぎでしたよ」(洋品店店主)

「路線バスは通常運行されていて、たまに撮影現場を横切っていたんですけど、竹内クンは“すみません”って何回も頭を下げていたのが、すごく好印象でした」(参加した女性エキストラ)

経済効果は1か月で1億5000万円

 行田市の撮影に参加したエキストラは総勢1万人以上。中には「名古屋から」というツワモノもいたようだ。とはいえ、1日に数千人を集めるのもひと苦労。商工観光課は市役所ならではの、こんな手法も用いたという。

「だいたい撮影スケジュールが決まるのが3日前で、紙に印刷して手渡すのは時間がかかるんですね。そこで教育委員会とも相談して、市内に24ある小中学校の校長先生の了承を得まして、緊急連絡メールにて保護者に送らせていただきました。子どもたちにも関心をもって見てもらうことは、いい経験、記憶に残るのではと思います

埼玉県民なら誰もが知る!?『十万石まんじゅう』がコラボ。

 また『陸王』は別の効果も与えている。撮影が行われた道路沿いに店舗を置く、行田市銘菓『十万石まんじゅう』を製造する十万石ふくさや。『陸王』の焼き印を押したコラボまんじゅうを販売しているのだが、

「撮影に参加されたエキストラの方が多くいらっしゃいまして、瞬く間に売り切れてしまいました。やはり影響はすごいと思います」(店員)

 ほかにも足袋の形をした、戸塚煎餅店の『陸王たび煎餅』もお土産として多く買われていったようだ。放送開始から徐々に、『こはぜ屋』の外観撮影地などロケ地を回る観光客も増え始めているという行田市。1か月の経済効果は実に1億5000万円にものぼるという。

 そんなドラマ効果が如実に現れているのが、

「これまで年間で1000、1500足しか出ていなかったのが、(注文が)8000足くらいになってしまい、生産は3か月、4か月遅れになっている状況です。こちらとしましても苦しいのと喜びが半分ですね」

 そう話すのは市内で足袋を製造販売し、また『陸王』で足袋製造の技術指導も行っている『きねや足袋』代表取締役の中澤貴之氏。その『きねや』が困惑しているのが、同社が販売しているランニング足袋『きねや無敵』だ。

撮影協力をする『きねや足袋』には、ランニング足袋『無敵』がズラリ

「池井戸さんが'12年に取材に来られて、そのときには構想が決まっていたそうです。こちらも商品(無敵)を企画していて、お互いに同時進行だったんです。

 ですから実際には『無敵』が(陸王の)モデルなのではなくて、SNSなどでユーザーが決めつけてしまって拡散されているのが実情なんですよ」

本物の“陸王”をはきたい

 のちに池井戸氏が小説『陸王』の連載を始めたのが'13年6月。そして『無敵』が発売されたのは同年9月と、“誕生”もほぼ同時。ネット上で勘違いしてしまうのも無理はないということだろう。

 では“本物”の『陸王』をはくことはできないのだろうか。劇中でライバルとして描かれている『アトランティス社』が開発したシューズ『RII』は、TBSの公式グッズ販売HPにて50足限定で予約販売を受け付けている。これを製造したのはスポーツメーカーの『ミズノ』だ。

「『ミズノ』としてのブランド商品ではなく、あくまで『陸王』の中で登場するアイテムになっております。基本的にはTBSさんのネットショップのみの販売になります」(広報宣伝部)

行田市商工センター売店には『陸王』グッズコーナーが

 実は番組に出てくる『陸王』も同社が手がけている。では、同様に販売もある?

現状では特に予定はしておりません。『陸王』は、原作や監督のイメージに合わせて劇中用に作らせていただいたモデルです。もちろん、素材は陸上、マラソン、駅伝のトップ選手がはくシューズと同じものを使用していますが、実際に耐久テストや走行テストを行っているわけではないんですね。

 (問題点がクリアになっても)『RII』同様にミズノ単独で(開発、販売を)決定できるものではなく、TBSさんとの兼ね合いもありますので……」(同・広報宣伝部)

 ではTBSに聞いてみると、

「そのような予定はございません」

 いよいよラストスパートをかける『陸王』はゴールまでどれだけ記録を伸ばす!?