左から赤澤燈、崎山つばさ 撮影/齋藤周造

 昨年春、短期間の上演ながら好評を得た舞台『クジラの子らは砂上に歌う』が、来年1月に再演される。初演に引き続き出演する主人公チャクロ役の赤澤燈さんと物語の主要人物スオウ役の崎山つばささんに、舞台『クジ砂』への熱い思いとその魅力を聞いた。

──再演が決まったときの心境は?

赤澤 正直やると思わなかったのでびっくりしましたけど。でも“やるならやっぱり僕らがやらないとな”っていう思いはありました。

崎山 僕も驚きました。初演はお客様への認知が低いところからスタートしたのですが、最終的には、千秋楽で満席になって。僕らとしてはいちばんうれしい形で幕を閉じることができたんですけど、それが再演されるっていうのは、とてもうれしいですね。考えられないことではあるので。

赤澤 結果として、演劇の力を感じる芝居を作ることができたことは、とてもうれしいです。

──今作の魅力とは?

赤澤 壮大なテーマの作品ではあるけど、砂だけあれば表現できちゃう世界だから、すごく舞台向きな作品だと思うんですよね。

崎山 だから身体で表現するみたいなのが多くて。使えるものは全部使うっていうのが演出の(松崎)史也さんのやり方で、僕らもそれにのっとって考えながらやっていくのが、『クジ砂』ならでは。

赤澤 少年少女たちの物語なんだけど、生と死がテーマになっていたりもするので意外に重いんですけど、原作も素敵な話なので。

崎山 僕らが何を伝えたいのかを本気で考えなければいけない作品だと思って、やってましたね。

──それぞれの役を再演でどう深めたいですか?

崎山 初演ではスオウの性格とか思いとか信念を大事にしてたんですけど。大切に思っている“泥クジラ”の民が亡くなってしまうことに対してのやるせない気持ちとか、何もできなかったという悲観的な部分を担当することが多くて。そこに重きを置いた感情のほうが強かったので。今回は単純に人が亡くなってしまって悲しいとかじゃなくて、もっと深いところを稽古(けいこ)をしていくなかで緻密(ちみつ)に作っていけたらと思います。

赤澤 初演は、チャクロが大切な人の死を乗り越えて成長していく過程を表現しながら、自分も一緒に成長していければいいなと思って演じていました。今回は再演をやる意味を考えると、僕らもだんだん大人になってきたので、新しいアプローチをしていきたいですね。

「お互い頼りにしてる、いい関係だね(笑)」

赤澤燈、崎山つばさ 撮影/齋藤周造

──ふたりが親しくなったのは今作の初演から?

赤澤 だってそれまで同い年っていうのも知らなかったし(笑)。同い年の役者に会うとけっこううれしくて、初演で稽古に入ったときも、それだけで拠(よ)りどころではありましたね。もちろん作品を作っていくうえでも。つばさはふわふわして見えるけどすごくまじめで頼りになるし、僕、まじめな人が好きなんで(笑)。それが再演をやるってなって、つばさの存在がもっと大きくなってるのに気づいて。再演のキャストが決まったときも、すぐLINEしたし。ふだんは、あんまりそういうことしないんですけど。

崎山 いや、そんなうれしい言葉をいただいて。また燈と一緒にやれるのはほんとにうれしいので、こちらこそです。燈の熱量みたいなのって、お芝居中でもすごく伝わるんですよね。例えば『クジ砂』の公演中でも、僕にバンッて抱きつくシーンとかガチなんです。

赤澤 アハハハハ!

崎山 痛いくらいバンッてきて(笑)。芝居自体にも熱いですし、僕もそういう話は好きなので。同じような感覚でお芝居をしてる人なのかなって。やっぱり熱い人が座長だと引っ張られるし、こっちも頑張ろうって気にもなるので。頼りになるのはこちらこそです。僕ら、いい関係だよね?(笑)

赤澤 いい関係だよね(笑)。

──最後に熱い意気込みをお願いします!

崎山 今回はキャストも代わるので、原作を知らない方でも初演を見てない方でも、楽しんでいただけるような、ぜんぜん違う『クジ砂』の世界になると思っていて。燈がチャクロとしてやっていることとか、僕がスオウとして“泥クジラ”を思う気持ちとか、より強く作っていけると思ってます。この再演の先に続編があるかもしれないし、そういう気持ちで『クジ砂』をもっと盛り上げていけるような舞台にしたいと思っています。

赤澤 『クジ砂』のことを考えると、初演のときの思い出だったり、お客さんの熱量だったり、ぐわ〜っと初演の最初から千秋楽までに作品自体が上がっていく雰囲気だったり……。肌で感じてたものがバーッとよみがえってくることがあって。このふたりが軸になって引っ張って、初演よりも感動的で心にグッとくる作品にしますので楽しみにしててください。

舞台情報
 

舞台『クジラの子らは砂上に歌う』

 梅田阿比による同名の人気漫画の舞台化。砂がすべてを覆いつくす世界・砂の海に浮かぶ巨船“泥クジラ”で暮らす人々の生きざまを描く。感情を発動源とする超能力“サイミア”を操る短命の種族のひとり・少年チャクロ(赤澤燈)は、ある日、漂着した破壊船の中でひとりの少女と出会い、彼らの運命は大きく変わっていく。

●東京公演:2018年1月25日〜1月28日@AiiA 2.5 Theater Tokyo
●大阪公演:2018年2月3日〜2月4日@サンケイホールブリーゼ
【HP】www.kuji-suna-stage.com

プロフィール

あかざわ・ともる◎1990年3月14日生まれ。東京都出身。AB型。‘10年舞台デビュー。以降、舞台を中心にさまざまな作品に出演。主な出演作は舞台『メサイア』『男水!』など。舞台『クジラの子らは砂上に歌う』では主人公の少年チャクロ役で主演。映画『逃げた魚はおよいでる』がユナイテッド・シネマアクアシティお台場ほかで公開中。

さきやま・つばさ◎1989年11月3日生まれ。千葉県出身。B型。‘14年俳優デビュー。以降、舞台作品を中心に活躍。ミュージカル『刀剣乱舞』の石切丸役で話題に。舞台『クジラの子らは砂上に歌う』では“泥クジラ”の首長候補の美貌の少年・スオウを演じる。11月1日にシングル『月花夜/君の隣へ』で歌手デビューも。

(取材・文/井ノ口裕子 撮影/齋藤周造)