孫へのおこづかいの渡し方

 可愛い孫には財布のヒモがゆるみがち。でも余計な税金を国に取られるのは絶対イヤ! お得な援助方法を、人気FPに聞きました。

『贈与税』をいかに回避するかがカギ

 多くが正社員として勤め上げ、年功序列、終身雇用が機能していたころに退職したシニア世代。不況しか知らない21世紀の孫世代から見て、さぞや頼りがいのある祖父母に見えることだろう。お正月や誕生日など節目のプレゼントやお小遣い、進学や留学に伴う学費、果ては将来の結婚式など、経済的援助の機会のたびに期待してしまうのも無理はない。

 さらに言えば、現在は少子高齢化。例えば、自身は子どもを3人持ったが、孫は1人というシニアも珍しくない。孫可愛さに、つい財布のヒモをゆるめてしまうのもうなずける。
「お孫さんへの経済的な援助は結構なのですが、ここでカギとなるのが、“贈与税”。やみくもにおこづかいを渡していると、税務署から“こちらにも税金お願いしま~す”と言われてしまうかもしれませんよ

 こう話すのは、ファイナンシャルプランナーの山口京子さん。個人が財産をもらったときには贈与税がかかる。つまり祖父母が一定額以上の財産(例えばお金や土地)を孫にあげると、基本的に孫が贈与税を支払う義務が出てくるのだ。

 その限度額は、年間110万円。

「お年玉をお正月に1万円、おこづかいをお誕生日に2万円なんて額なら、もちろん贈与税はかかりません。でも、“大学へ進学したお祝いに”などと、ポーンと200万円くらいあげるなんてケースでは、贈与税がかかります。

 どうせ税務署にバレないと思っていても、人の口に戸は立てられません。親戚や近所の人のやっかみから、いわゆるタレコミをされることは多いので要注意です」(山口さん、以下同)

いまどきの援助ルール

 それでは、合法的に、ただしできるだけ多く孫にお金を残すには、どうすればいいのか?

「お孫さんの学費を援助したいけれど、年間110万円以上になってしまうという場合、話は簡単です。お金を孫に渡すのではなく、進学先の学校に祖父母が直接、振り込んでしまえばいいんです

 生活費の援助に贈与税はかからない。そこで学費、つまり生活費に使われるという確かな証拠があれば、贈与税の適用を回避できる。

「ここでポイントなのは、あげたお金がダイレクトに学費になること。学費分のお金を渡したのに、万が一、孫に使い込まれたら大変です。無駄になったうえ、課税までされて踏んだり蹴ったり。そんなリスクを回避する意味でも、学校へ直接支払うことが最もスムーズです」

 また、1度に多額のお金をあげなくても、コツコツと孫名義で貯めて、大学進学や成人するときにあげるという方法もある。

 しかし、これには注意が必要、と山口さん。

「例えば、田中A子さんが孫のB太くんのために、内緒で銀行口座を作り、せっせとお金を入れてあげたとします。ところが、口座の名義はB太くんであっても、通帳や印鑑を持っているのはA子さん。これでは万が一、A子さんが亡くなったときに、口座のお金は“田中A子さんの財産”とみなされ、相続税の対象に。さらに相続人で分けようと争いになるおそれがあります」

 この事態を避けるには、B太くんが持っている口座にお金を振り込み、通帳や印鑑を、B太くんや両親が管理するのが必須。

 加えて、両親の署名押印入りの贈与契約書を作成すれば安心だ。

 保険料を毎月支払い、満期になるまでコツコツ貯める学資保険も人気だが、

「贈与したお金で、子どもが孫のために入るならまだしも、最近は利率も下がっていますからシニアの年齢で契約するのは、あまりおすすめできません」

イチオシ積み立ては「ジュニアNISA」

 可愛い孫のため、どうやってお金を残すべきか。山口さんのイチオシは貯蓄よりも値上がりが期待できる『ジュニアNISA』だ。

「19歳以下の未成年の子どもが対象の『少額投資非課税制度』のこと。口座を証券会社や銀行、郵便局で開けば、子ども1人につき年間投資額80万円を限度に、運用管理者である親や祖父母が株や投信などを売買できます。本来なら、配当金や売買益などにかかる約20%の税金が、商品購入から5年間は課税されないことがポイント。

 また基本的に、教育資金を作るための制度なので、口座のお金は18歳まで引き出し制限があります」

 通常の投資と同じく元本保証はない。そのため無理のない金額で毎月、低リスクの商品をコツコツと買っていくのがおすすめだ。

「ジュニアNISAの大きな特徴、(1)教育資金のためのもの、(2)長期投資ができるという点を考えると、日経平均など指数に連動した国内外のインデックス投信やETF(※)といった商品を買うのが王道です。

 毎月1万~2万円の一定額を買う積立投資をすれば、学資保険や積立貯蓄感覚で活用OK。買った商品が値上がりしたらもちろん売却して利益の確定ができますが、原則お金の引き出しは子どもが3月31日時点で18歳の前年の12月31日までできません」

 ただし、と山口さんは最後に付け加える。

「金融商品を扱うなら、最低限、商品の仕組みがわかるような勉強は必要です。孫のためと思えば頑張れるのではないでしょうか。ただ、あまりに孫が可愛いからといって、老後資金が心もとなくなるまで援助しないように気をつけてくださいね!」

■FPが小耳にはさんだウラ話
「近年、アンティークコインを購入して、孫や子どもに渡すお金持ちが多いとか」(山口さん、以下同)。アンティークコインは、100年以上前に発行された金貨・銀貨の総称。世界中にファンがいて、5年で400万円から4000万円になった「ウナとライオン」というコインもある。「お手ごろ価格の現代美術を買って、孫や子どもにプレゼントする人もいます」。値上がりを期待しているのは同様だが、こちらは目利きが必要だ。

■FPが小耳にはさんだウラ話
「疎遠な孫より、いつも一緒にお出かけする孫が可愛いからと、差をつけてしまう祖父母もいると思うんです。でも、それを贈与や相続に反映させるのはNGです」。今はよくとも、祖父母の死後に骨肉の争いの種になりやすい。「相続対策に教育費を1500万円非課税で贈与できる制度もありますが、内孫だけにこれをしたらもめますよ~」。何ごともほどほどに!

※インデックス投信……日経平均株価やTOPIXなどの株価指数と同じ動きをする運用を目指している投資信託 ETF……株価指数と同じ運用を目指すのはインデックス投信と同じだが、時価で市場売買でき、証券取引所があいている時間なら何度も売買できる

<教えてくれた人>
山口京子さん◎難しいお金の話をわかりやすく丁寧に説明する、暮らしのお金のスペシャリスト。オールアバウト『家計管理』『お金美人のすすめ』執筆。各種メディアで活躍するほか、個人相談、セミナーも精力的にこなす。