左が女装姿の貴乃花親方

「警察の捜査が終わった時点で協力する」

 11月30日に行われた相撲協会の理事会。日馬富士の暴行問題に関して、被害者である弟子の貴ノ岩の協会による聴取をいっさい拒んでいた貴乃花親方が、条件をつけながらも“折れた”という。

孤高だけど意外な一面も

「普段の理事会は業務報告程度なので30分ほどで終わるのですが、この日は3時間半近くもかかりました。マスコミが入れたのは、冒頭の写真撮影だけ。どの理事も険しい表情でしたが、八角親方の真向かいに座った貴乃花親方は目を合わせないものの、土俵の上のような一触即発のオーラが漂っていましたよ」(スポーツ紙相撲担当記者) 

 すでに引退した日馬富士による暴行問題が、いつの間にか“貴乃花vs相撲協会”のバトルに。しかも、聴取に貴ノ岩を応じさせない彼に対する批判の声は、相撲界の中で日に日に高まっている。

「理事会だけでなく、白鵬からも“貴乃花巡業部長の下での冬巡業は参加できない”と名指しされていました。彼は現役時代から“一匹オオカミ”的存在で、協会内で味方は少ないのではないでしょうか」(同・スポーツ紙担当記者)

 平成の大横綱といわれた現役時代だけでなく、親方としてもまさに“孤高”という言葉がぴったりの貴乃花。だが、彼は昨年末に意外な一面を披露していたのだ─。

「まさか、あんなことを嬉々として話す親方だとは思いませんでした」

 そう話すのは、昨年12月26日、東京・渋谷にあるセルリアンタワー東急ホテルで行われた『第1回 貴乃花ファミリー忘年会』の出席者のひとり。ボールルームに約400人を集め、盛大に行われるはずだったのだが……。

「まず驚いたのは会費が1人3万円だったのにもかかわらず、料理がホテルのものでなく仕出し料理だったんです。から揚げにフライドポテト、焼きそば、チャーハンと出てくるのは高級ホテルに似つかわしくない居酒屋料理ばかり。

 飲み放題でしたが、ワインを注文したらプラスチックのデキャンタなのにはあきれました。ほかの出席者も“さすがにこれは……”と戸惑っていましたよ」(別の出席者)

 おそらくホテルは場所だけを貸していたのだろう。ウエーターは少なく、部屋のおかみさんたちが忙しく働いていた。ここまで大勢が集まったのは、貴乃花一門の親方だけでなく、別の一門の親方も来ていたから。それら部屋ごとの後援者も来ていたのだ。

1時間のメイキングビデオ

「初めは親方たちの挨拶や所属力士の紹介、親方衆のカラオケなどがありました。その間、貴乃花親方は各テーブルを回り、写真撮影などにも応じていましたね」(貴乃花部屋後援会のひとり)

 料理にケチがついたとはいえ、ここまではよくある相撲部屋のパーティー風景。だが、宴も中盤に差しかかったころに、雰囲気は一変する。

貴乃花ファミリー忘年会で配られた、11人の親方の女装カレンダー。左上の貴乃花から時計回りに、巌雄、大竜、隆三杉、時津海、寺尾、旭豊、豊真将、栃東、湊富士、大碇と思われる(名称は現役時代の四股名)

「会場にプロジェクターが3台ほど出され、映像が流れ出したんです。それは親方たちが女性姿に扮するまでを映したメーキングビデオでした。メイクしたり、カツラをかぶったりする様子を1時間ほど流していましたよ。

 一部のファンは喜んでいましたが、8割方の人はドン引き。特にほかの部屋の後援者は、“貴乃花部屋は毎回、こんなハレンチなのか”と怒っていましたね」(同・貴乃花部屋後援者)

 女装シーンが流れたのは、貴乃花親方のほか一門の大嶽(元大竜)、千賀ノ浦(元隆三杉)、立浪(元旭豊)の親方衆。それに玉ノ井(元栃東)、時津風(元時津海)、錣山(元寺尾)などほかの一門の親方たちも含めた合計11人。

「ビデオのトリが貴乃花親方でした。映像が終わり、彼が30分ほどトークしたのですが、相撲の話はほとんどせずに女装の話ばかり。“この中でいちばん自分がキレイだ”“ヘアメイクの人は大変だっただろうね”など、楽しそうに話していました。最後には“あまりに自分が美しかったのでTシャツにしました”と満面の笑みで発表していました」(別の部屋の後援者)

 そして、参加者全員におみやげとして配られたのが、親方衆の“女装カレンダー”と、貴乃花の“女装Tシャツ”だ。

「お開きになると、女性の司会者が“女装のことはSNSにあげないでください”と、何度もアナウンスしていました。さすがに悪ふざけがすぎたと思ったのかもしれませんね」(同・別の部屋の後援者)

理事選に向けた準備

誰もが目を引く、背中に大きく貴乃花の女装姿がプリントされたTシャツ

 貴乃花親方といえば、スーツに長いマフラー、時にはサングラスをする“マフィアファッション”がトレードマーク。そんな彼が、紫のアイシャドーに真っ赤なルージュなんて……。

「この企画を考えたのは、どうも貴乃花部屋のおかみさんである花田景子さんのようですよ。彼女がメイクやスタイリスト、カメラマンまで手配したって聞きました。確かに若い女性ファンなどは喜んだのかもしれませんが、後援者の多くは年配の方。こんなことをすることが相撲改革だとしたら、先行きは思いやられますよ」(相撲協会関係者)

 だが、ある相撲ライターは、この“女装カレンダー”を、

「素晴らしく練られた作戦」と、感嘆の声を上げる。

「一門の親方だけでなく、別の一門の親方まで入っているのが非常に興味深い。特に時津風一門の筆頭である時津風親方まで参加しているとなれば、これは間違いなく来年2月に行われる理事長選へ向けた準備ですよ。“女装撮影会”という恥ずかしすぎるイベントをあえてすることで、貴乃花は彼らの忠誠心を試したのではないでしょうか

 時津風一門は8部屋で、相撲界では3番目の勢力。しかも、12部屋を従える最大派閥の出羽の海一門から山響、玉ノ井の両親方も参加している。4部屋の貴乃花一門にとっては、これ以上ない援軍だ。

「日馬富士の一件で孤立しているように見えますが、水面下では着々と応援者を増やしている。特に貴乃花と同年代の親方たちは、古い体質に嫌気がさしている人も多いのです。

 もしかしたら、角界を閉鎖的にしている“一門制”を壊してしまうかも。それが成功したらこの女装のおかげかもしれませんね。相撲取りですから、何より“裸の付き合い”がいちばんなんですよ(笑)」(同・相撲ライター)

 そこで、なぜ女装カレンダーを作ったのか、貴乃花部屋にメールで問い合わせたが、期限までに返答はなかった。

《ナルシストにもなれないような男なんてのはな、大したことないんだよ》

 この貴乃花の言葉を長男である花田優一氏は著書『生粋』(小社刊)で綴っている。彼の“ナルシストぶり”が相撲界改革の原動力なのか。