古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第38回は山名宏和が担当します。

川田裕美 様

 2018年最初に、しかも元日から勝手に表彰させて頂くのは、川田裕美さんである。

川田裕美アナウンサー

 読売テレビのアナウンサーだった川田さんが、ゴールデンタイムのバラエティー番組でその名を知られるようになったのは、無類のあんこ好きがきっかけだったように記憶している。

「自宅の冷蔵庫にゆであずきの缶詰を常備」

「多い時は1日2缶ゆであずきを平らげる」

 類まれなるそのあんこ愛は、バラエティー番組制作陣の心をわしづかみにした。

 そして次に衝撃を与えたのが、スキップだった。

「異常にスキップが下手」

 いや、下手という次元を超えている。放送禁止スレスレの動きである。まるで壊れたレプリカント。モーションキャプチャーで記録して、次回の『スター・ウォーズ』に出てくる異星人に使ってほしいほどの独特な動きである。

 しかしながら、あんこ好きとスキップ下手だけでは、当然ながら、現在のように数々のレギュラー番組で司会進行を務めることはできない。

 なぜいろいろな番組が川田さんを起用するのか。僕が担当する『この差って何ですか?』(TBS系 毎週火曜 夜7時)も昨年4月、出産を控えた赤江珠緒さんから川田さんにMCが交代した。その現場の声を聞くと、川田さんが売れっ子になった理由が垣間見えてくる。

 たとえばそれは彼女のこんな点だ。

「話にカットインしていくことができる」

 スタジオのトークが盛り上がるのは大事なことだ。だが、盛り上がりすぎて番組が進行しないのも困る。そんな時、川田さんは臆することなく話に割り込んでいき、流れを元に戻してくれる。

 これはなかなかできることではない。たいていの人は、盛り上がっているところに割り込んでいって、場の空気を読めないヤツだと思われたらどうしようと心配し、割って入ることができない。他の出演者に見えるように指示が出されていても、なかなかできない。でも、川田さんはそれを鮮やかにやってのけるのだ。

 オンエアでは編集されているため、わからないと思うが、現場的にはこういうことがちゃんとできる進行役は本当に助かる。

「アドリブトークで、語尾を最後まで言い切ることができる」

 これも現場スタッフだからわかる川田さんの長所の一つだ。

 アナウンサーは喋りのプロである。だから当然、台本に書いてあるセリフはしっかり喋ることができる。しかし、台本にないアドリブのトークになると途端に弱くなる。よくあるのが、話し始めははっきりしているが、語尾がヘニャヘニャとなってしまうケースだ。途中で自分の話に自信がなくなってしまうのかもしれない。こうなるとどんなに面白い話でも、その面白さが半減してしまう。この失敗、女性アナウンサーには多いのだが、川田さんにはない。最後までビシっと言い切って終わる。

 こうしたトークの腕はやはり『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系 毎週月〜金 午後1時55分)で鍛えられたものだろう。

 それにしても不思議なのは、運動神経はあんな悪いのに、トークの反射神経は抜群というギャップ。まさに「この差って何ですか?」と言いたくなる。

 今回、この原稿を書くにあたって、番組プロデューサーに「川田さんのいいなぁと思うところはどこか?」と尋ねたら、こんな答えが帰って返ってきた。

「女子アナなのに、昭和っぽい」

「女子アナなのに、普通に電車に乗ってるっぽい」

 またしてもギャップだ。

 この豊富なギャップこそが、川田さんの魅力の源なのだろう。

 川田裕美さんには「女子アナなのに…大賞」を勝手に差し上げ、勝手に表彰します。

 しかしこれで今年、「プロ野球選手と電撃入籍」なんてことになったら……あ、それもギャップか!


<プロフィール>

山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』『世界何だコレ!?ミステリー』といったバラエティー番組から、『ガイアの夜明け』『未来世紀ジパング』といった経済番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく、放送作家として活動中。