左から松本若菜、内田慈 撮影/佐藤靖彦

内田「30代後半に差しかかると、周りが勝手に“焦り”というイメージをつけている気がするんです。結婚、出産、仕事もそう」

松本「うん。それこそ“崖っぷち”って言われたり(笑)」

内田「そうなの。そう言われることで、逆に意識していなかったのに焦っちゃう、みたいなところってあるよね」

 舞台を中心に実力を磨き、数多くの映画のほか、朝ドラ『まれ』やドラマ『ハロー張りネズミ』などに出演、個性的な存在感を発揮してきた内田慈(34)。そして昨年は映画『愚行録』『結婚』ほか、ドラマ『コウノドリ』への新レギュラー出演が話題となった松本若菜(33)をツーショットインタビュー。

 20代で数多くの経験を積み重ね、“アラサー女優”となった彼女たちの思いとは――。

内田「女優は定年がないから、“ゆっくりやっていいんだよ”って思ってくれる人もいる一方で、外の世界では35歳っていうと、みんな役職についてたりして。後輩もバリバリ育てて、そういう年齢なんだなって」

松本「私が感じるのは、30代になってスタッフさんの対応が変わってきたことかな(笑)」

内田「すごいわかる!(笑)“かまわれ方”が変わるよね。悪い意味じゃなくて」

松本「むしろ、これまでがかまわれすぎていたのかな。“もう大人なんだから”って安心されている感じがします」

 そんな2人が映画『ピンカートンに会いにいく』では、再結成を目指す元アイドルのアラフォーを熱演! 大人なら誰もが1度は感じたことがある“こんなはずじゃなかった”という思いを、優しくユーモアたっぷりに描き出す。

10代とか20代前半のときはヘンに周りを意識しすぎてた

 内田はプライドが高く、口を開けば悪態をつく“こじらせ女子”を演じているが……。 

内田「今回演じた優子とはベースが似ているなって。例えばペラペラしゃべるわりに大切な思いを伝えるのが下手だったり、強がりなところとか。今はすごい気をつけているけど、わりと人のせいにする感じとか(笑)」

内田慈 撮影/佐藤靖彦

松本「私は役とリンクするというより共感できたのが、10代とか20代前半のときってヘンに周りを意識しすぎてたなって。すごくプライドが高くなっちゃったり」

内田「カッコ悪いところを見せたくないんだよね」

松本「そう。“なんであの子が出てるのに、私が出られないの”っていうひがみがあったり。でも30代にもなると、別にそれもいいじゃんって思えてくる。例えば、この仕事をしていると、必ず“かぶる”人っていません? 出演候補がニコイチで残ってて、“もう1人は誰ですか?”って聞くと、“またあの子!?”みたいな(笑)」

内田「あ~あるある! で、結果、選ばれなかったり(笑)」

松本「そういうのも、もちろん自分の中の嫌な部分で“あそこのシーン、私だったらこうしたのに”みたいなところはあるけど、結局は“やっぱりあの役はあの方だったんだな”って。そう思えるようになったのは30歳過ぎてからかも」

内田「本当にそうだよね。私も自分が出られなかった作品を見て、正直“面白くないといいな”って思うところもあって。20代のときは自分に自信がなかったから特にかな。でも結局、面白くなくても嫌だと気づいて。そう思えた30代からは、誰かと比べてではなく自分との闘いだと思っています」

松本若菜 撮影/佐藤靖彦

 厳しい芸能界を生き抜いてきた2人。30代に入ってより充実した仕事ぶりを見せているが、プライベートの暮らしは昔とほとんど変わらないという。

内田「私はもともと質素で、風呂ナシに住んでいた時代もあったせいか、こぢんまりとした生活が好きなんです。今も古い一軒家に住んでます。若菜ちゃんは?」

松本「そうだな。例えば今までは安い小松菜198円を買っていたのが、ちょっと高い238円のホウレンソウを選べるようになったとかはあります(笑)。でも全身ブランドで固めて……とかはない。そっちに染まりたくないんです」

内田「そうなんだよね。“芸能人だぜ、女優だぜ”みたいにはなりたくないし、自分がなれるとも思っていないんです」

松本「それに、この年になってもさんざん母親から“実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな、だからね!”って。あんたが調子に乗ったらせっかく築いてきた関係性もどんどん崩れていくんだからねって強く言われています」

内田「本当それって大事なことだよね」

松本「そう。これからも地に足をつけて、しっかりと歩んでいきたいです」

実は、“元アイドル役”を演じることが多い!

 アイドルに憧れていたことはある?

内田「“元アイドル役”を演じることがめちゃくちゃ多くて。私自身、旬を過ぎた感じがするのかな(笑)。アイドルになりたいとは思ってなかったけど、小さいころは歌も踊りも大好きでした。周りにバレないように布団をかぶってコッソリ歌を練習したりしていたんですよ」

 松本は、23歳でデビュー。

松本「デビュー作の『仮面ライダー電王』でタケちゃん(佐藤健)の姉を演じさせていただいたんです。今も覚えてくれている方が多くてうれしいですね。あっ、この前髪ですか? 『コウノドリ』の撮影が終わってすぐに切りました。ずっと我慢していて、ネイルも自分でやったんですよ!」

<映画情報>

映画『ピンカートンに会いにいく』

(c)松竹ブロードキャスティング ※写真は20年前の彼女たち

 ブレイク寸前で突然解散してしまった伝説の5人組アイドル“ピンカートン”が20年の時を経て再結成!? 「過去にすがるなんてイタいことするつもりはない!」と言い張っていた主人公・神崎優子(内田慈)をはじめ、元メンバーが恥も外聞も捨て、大勝負に挑む! 1月20日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。