吉本実憂(左)、峯岸みなみ(右) 撮影/佐藤靖彦

 国民的美少女グランプリの女優・吉本実憂(21)と、AKB48の峯岸みなみ(25)が、1月23日に開幕する『三文オペラ』でそろって初舞台を踏み、初共演する。役柄は恋敵だが、稽古を通して運命共同体と感じているふたりが、その心中を吐露した本音対談―。

舞台オーディションは
緊張せず、ダメで当然

─舞台に興味があった?

吉本「事務所の先輩や共演させていただいた役者さんの舞台を見に行ったりしていて、私もいつか舞台に挑戦できたらいいなと、マネージャーさんに話していたけど、まさかこんなに早くできる機会が来るとは思いませんでした。(初舞台は)不安な要素がありつつ、ほんのちょっと楽しみな部分もあります」

峯岸「私は、一昨年(’16年)ごろ、やる気が出ない、元気が出ない時期があったときに、いろんな舞台を見ることで、心のバランスをとっていて、月に2本から5本くらい見ていました(吉本「えー、すごい」と感心)。見ているうちにいつか、やってみたい。実憂ちゃんと同じで、マネージャーさんに話していて、オーディションの話をもらって、受けました」

吉本「私もオーディションを受けました。事前に内容とかも聞かされていないのが、逆によかったみたいで、緊張せずにできました。オーディションでは(演出家の)谷さんに言われたことを思うままにやる感じが、いままでとは違って、楽しめた部分がたくさんありました」

峯岸「お芝居をする機会が少なかったし、舞台の世界もわからなかったので、オーディションはダメで当然、楽しもうというつもりで受けました」

─オーディションの内容は?

吉本「小さなスタジオに、私ひとりで、谷さんとプロデューサー、歌の先生の前で、お芝居と歌を見てもらいました。芝居は、その場で『三文オペラ』の台本の一部を渡されて、ポリーとルーシーの対決シーンで、谷さんを相手役に、ポリー役を演じました。

 歌は、事前に好きな曲を歌ってくださいと言われていたので、歌い慣れていたアンジェラ・アキさんの『手紙』を歌いました。アカペラだったので、お芝居よりも緊張したし、怖いなと思いました」

峯岸「私のときは、『三文オペラ』の楽曲が課題曲だったので、オーディションのためのボイストレーニングにも行きました。実憂ちゃんと同じシーンを、私はどっちもやって、1時間くらいかけてやりました」

吉本「(オーディションでの)手ごたえはそんなになくて、受かっても受からなくても楽しかったからいいやって。受かったと聞いたときは(作品の)内容も把握できていなかったので、これからどうなるんだろうと、プレッシャーが出てきましたね」

峯岸「実感が湧かないし、舞台がどうやって作られているのかも知らないので、これからどうなるんだろう、何から始まるんだろう、という感じでした。(PR用の)ビジュアル撮影のときに、舞台をやるんだなという実感が少し湧いてきました」

吉本「(ビジュアル撮影は)箱の中に共演者みんなで入って、撮影したんですよね」

峯岸「箱の真上から撮ったよね。舞台好きで、いろんなビジュアルを見ていたので、こんなふうにやっているんだと、内心はしゃいでいました。でも、初対面の方ばかりだったので、そんな気持ちは出せないし、緊張していました。(撮影では)底から這い上がるイメージと言われたので、苦しい顔をしています」

吉本「そうそう。這い上がるようにと言われました」

役につぶされそう!?
恥やテレは舞台の邪魔

峯岸みなみ 撮影/佐藤靖彦

─役の印象は?

峯岸「ビジュアル撮影の日に会見取材があって、役について聞かれても、ほぼわからないまま話していた感じ。でも実憂ちゃんの戸惑いも見えたので、安心した(笑)」

吉本「あらすじぐらいしかわからなくて(役については)全然わかってなかった……」

峯岸「(会見で)それっぽいことを言ったけど、もう1回、取材を受け直したいなって思います。いまは、いろいろ考えて思うこともあるし、いろいろ言えることが増えたと思う。あのときは、本当にわからなくて、自分のことじゃないみたいに、手探り状態で話していたと思う」

吉本「私も同じです。わからなかった〜(苦笑)。でも、いまは(役に)つぶされるんじゃないかと思うくらい考えています。まだまだ作り上げている途中だけど、ポリーの感情が、台本の文字だけではわからなかったりするんですよ。

 谷さんがどう演じてほしくて、このセリフを書いたのかとか。稽古してみると、ポリーは、最初は純粋な女の子だったけど、マクヒィスに恋して、どんどん変わっていく。成長という言葉が正しいのかわからないけど、最終的には女親分になる。振り幅がすごいし、シーンによって人格が変わる。それもひとつの成長だったりするのかもしれないけど、演じるには、バックグラウンドがしっかりしていないと演じきれないと思って、そこを作るのに苦労しています。

 それを考えることはできても合っているのか、不安で……。最初のころ、谷さんに“ポリーってどんな人ですか?”と聞いたら、“これから作り上げていくんだよ”と、言われてしまって(笑)」

峯岸「(恋敵役のルーシーは)ざっくりと愛人としか理解していなかった。でも、実際に稽古してみると、話し方が強かったり、セリフがきついけど、内面はかわいらしい女性だなと。(マクヒィスへの)“好き”がすべての原動力。悪気はなくて、本当に思ったままを行動に出してしまう。

 意外と素直でかわいい女性と感じています。ただ、演じる私の中に、ルーシーのような“可愛げ”がないんです。どうしたら可愛げを出せるか。自分にないものを膨らませて演じるのは、すごく難しい。何をすればいいのかもわからなくて、可愛げ生まれ待ちです」

─稽古を重ねて、発見や魅力を感じているのでは?

吉本「周りを見る余裕がまだないです。いまはとにかくセリフを言って感情を作って、掛け合いして、そのなかで生み出されるものを自分で見つけることで精いっぱいです」

峯岸「谷さんが脚本を書いているので、細かいニュアンスを教えてくれるけど、言われたとおりにそれっぽく演じるので精いっぱい。そこに感情をのせていくのは難しい。共演する先輩方の稽古を見ているときには、隣の席にいる実憂ちゃんと、“みんな楽しそうだね”って話すよね」

吉本「私たちは、そこまで行けてないですよね」

峯岸「本気でふざけている、みたいな感じ。たくさん笑わせた者勝ちと思うくらい、みなさんいろんなアプローチの仕方をされている。毎回違うし振り切っているなって。

 恥とかテレは舞台には邪魔だなと、すごい勉強になります。みなさんが培ってきたものにとうていかなうはずはないけど、ふたりのシーンで(作品の)パワーが下がるようなことがないようにしたいです」

─アドバイスは?

吉本「白井(晃)さんに、発声の仕方を教えていただきました。階段で声を出すと響くじゃないですか。その感覚がつかめれば大丈夫だと教えてくださった。それからは、稽古場でもいかに階段で発したような声に近づけるかを意識するようになり、谷さんに声が出るようになったと言われたときには、やった! と思いました」

峯岸「私も白井さんから発声の仕方と、舞台は、見ている人と同じ空間にいるから、見せていることを意識するといいよと、アドバイスしていただきました。それまでは実憂ちゃんに向かって、セリフを言うだけだったけど、見られているという意識を持つと、しゃべり方にもセリフにも空間が生まれるよ、と。まだできてないけど、意識してやろうと思います」

華やかな女子トークなし
ふたりでお酒を飲みたい

吉本実憂 撮影/佐藤靖彦

─稽古以外での楽しみは?

吉本「峯岸さんがいてくださると安心します」

峯岸「確かに。私もそう。ふたりでずっとしゃべっています」

吉本「不安要素を話しています。セリフか愚痴しか言っていないかも」

峯岸「お互いネガティブなことしか話していないね。20代女子のさわやかで華やかな話はなくて、舞台の不安を分かち合っています」

─お互いの印象は?

峯岸「実憂ちゃんは、声がきれいで、澄んでいるので、聴いていて心地いい。それに、年下なのに、めちゃくちゃ落ち着いてる」

吉本「峯岸さんは、(実の)お姉ちゃんと同じ年なので、勝手にお姉ちゃんだと思っていて、安心感があります。女子トークはないけど、(お酒を)飲みに行こうと言ってくださるので、スケジュールを合わせて、行きたいなと思います」

峯岸「実憂ちゃんの顔を見てたぶん、飲める子じゃないかなと思って」

吉本「飲めます(笑)。弱くはない、かな。梅酒とか、日本酒が好きです」

峯岸「私はハイボールだけど、相手によって何でも合わせられます」

─本番のイメージは?

峯岸「まだそこまでは……。(AKB48劇場とは)全然違うと思います。客席で咳をする人がいたときに、舞台上でどう感じるんだろう、とか思います」

吉本「セリフが飛びそう(笑)。知り合いの顔が見えたら、余計に緊張しそうなので、こっそり来てほしい」

峯岸「谷さんが、毎日、(観客が)違うし、気が散る要素は山ほどあるから、と。稽古場で(関係者が)黙って見ているだけでも無理なのに、いろんな要素が本番で生まれるとなると、死ぬほど稽古しないと、不安でしかたないです」

吉本「そうですよね」

─2017年の総括と、初舞台を控えた今年の抱負を。

吉本「去年、主演したドラマの役作りで髪を30センチ切って、世界が変わったかのように自分の心が自由になりました。仕事をするようになってからは髪を伸ばしていましたが、小さいころから芸能界に入る前まで15年ぐらいボブヘアだったので、久々に髪を短くしたら、子どもの心を思い出した感じで、自然体でいろいろ楽しめるようになった気がします。それまでは、自分で自分を押し殺すようなところもあったけど、20歳の節目も重なっていつも以上に楽しかった1年でした。

 新年は、まずは舞台です。いまはそれしか頭にないです。うまく気分転換しながら、大好きなごはんをしっかり食べて、元気をつけて舞台でエネルギーを出して、いいお芝居ができたらいいなって。その先は、いまは考えられないです。

 小学校のときに習った“楽しく、明るく、元気よく”という言葉が、いまになってその大切さを身にしみて感じています。そして分岐点となる目標を運命に任せるのではなく、自分自身で作っていけたらいいなと思っています」

峯岸「実憂ちゃん、しっかりしているなぁ。私は去年、小嶋陽菜の卒業が決まって、同期が自分ひとりだけになっちゃう。覚悟を決めないといけないなという年明けでした。陽菜が卒業しても心配をかけないように、元気を出さないといけないと。

 一昨年ぐらいまでは、AKB48を辞めたいと思っていたけど、陽菜の卒業で、そういう気持ちが自然となくなって、夏ぐらいからは前向きになり、アイドルの仕事が楽しいと久しぶりに思えたんです。そんな気持ちでいたら、やりたかったお仕事も決まって、AKB48を続けていなかったら、こういうお仕事もできなかったかもしれないのでいいタイミングで、相乗効果になっていると思います。

 今回の大きな挑戦をAKB48で生かせられたらいいなと思っています。いまは、クリアな気持ちでシンプルに仕事を楽しめているので、このまま新しい年も突っ走っていけたらいいなと思います。
 これ(初舞台)を越えられたら、いろんなことが怖くなくなる気がしています」

吉本「そうですね。私も(初舞台後)何かあったらいいなと思います」

峯岸「舞台が終わるころまでには、実憂ちゃんといつでも飲みに行けるような関係になりたいな」

吉本「ぜひ、よろしくお願いします」

<舞台情報>
『三文オペラ』 演出・上演台本/谷賢一
【STORY】
 盗賊王マクヒィス(松岡充)は、乞食王ピーチャム(白井晃)のひとり娘ポリー(吉本)を見初め、結婚。それを知って激怒したピーチャムは、警視総監のブラウン(高橋和也)を脅し、マクヒィスを逮捕させる。牢獄に入れられたマクヒィスは、訪ねてきたポリーと、愛人のルーシー(峯岸)が鉢合わせすると、女ふたりの嫉妬とケンカを利用して脱獄するが……。
【公演】
 1月23日〜2月4日までKAAT神奈川芸術劇場、2月10日札幌市教育文化会館大ホール